政府が防衛力強化を目指す一方で日本の防衛産業が深刻な状況にある。利益向上が見込めず大手メーカーが相次いで撤退し、防衛装備品のサプライチェーン(供給網)の維持が懸念される。防衛装備庁は利益率向上、研究開発支援、海外輸出強化の3点を中心に対策を検討。年末にかけて政府が改定を進める国家安全保障戦略など「安保3文書」では抜本的な防衛産業基盤の強化策を打ち出す方針だ。
「防衛費の9割は国内向けで防衛力の抜本強化は経済成長の観点からも重要。防衛産業は防衛力そのものだ」。浜田靖一防衛相は2日、首相官邸での経済財政諮問会議でこう述べた。同会議への防衛相の出席は初とみられ、防衛省幹部は「それだけ防衛産業の重要性が増した」と解説する。
防衛産業の市場規模は家電産業(約2兆円)や航空宇宙産業(約1・2兆円)を上回る約3兆円。唯一の顧客である防衛省と直接契約できる「プライム企業」と呼ばれる主要15社を筆頭に、戦車や艦艇、航空機などの重工業▽レーダー、電子機器などの電気通信機器▽火薬や信管などの弾薬製造-などがある。