与党が反転攻勢へ 野党の被害救済法案の不備指摘

高額献金などの被害者救済に向けた法案協議に臨む与野党のメンバー=4日午後、国会内(矢島康弘撮影)
高額献金などの被害者救済に向けた法案協議に臨む与野党のメンバー=4日午後、国会内(矢島康弘撮影)

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)などによる高額献金の被害救済を図る法整備に向けた自民、公明、立憲民主、日本維新の会による与野党協議会の第5回会合で、与党側は野党側の独自法案について54項目にわたり確認を求めた。野党は与野党協議を「与党が被害者救済に後ろ向き」とアピールする場に利用している側面もあることから、与党は実効性の面から野党法案の不備を列挙して「反転攻勢」に出た形だ。

「現実に、この(野党が提出した)法案では救済するのが難しい点が多すぎることを説明した」

弁護士でもある自民党の宮崎政久法務部会長は4日の会合後、記者団にこう語った。宮崎氏は「被害救済の必要性は非常に高く、法制上の措置をとるべきだとの認識は共有している」と強調。そのうえで、野党法案は細部の完成度が低いとして、「救済されるケースが出てこなくなると危惧している」と述べた。

公明の大口善徳政調会長代理も弁護士で、与党は法解釈の観点から、野党に法案の重要概念の定義が不明瞭だと伝えてきた。

野党法案は、マインドコントロール状態での高額献金を禁止し、国による是正命令に応じない場合、刑事罰を科すことを可能とする。これに対し与党は、マインドコントロール状態であるかどうかを家庭裁判所などが判断することは困難であると指摘。質問状で与党側は、マインドコントロールをめぐり「『人の自由な意思決定を著しく困難とするような状況』とは具体的にどのような状況をさすのか」などと回答を求めた。

与党はまた、刑事罰の導入をめぐっても犯罪行為と刑罰の対象をあらかじめ定める「罪刑法定主義」に反しかねないとの立場をとる。さらに野党案が、家裁が認定すれば、被害者の家族らが被害者本人に代わって返金請求できる「特別補助制度」の導入を盛り込んでいることに対しても、憲法が保障する自己決定権や財産権に抵触する恐れがあるとする。質問状では特別補助制度について「本人の意思に反しても、特別補助開始の審判ができるのか」と確認した。

宮崎氏は野党への質問について記者団に「揚げ足をとって論難する趣旨はない。(被害者救済の)思いが実現できるのかどうかを尋ねた」と意義を強調した。(奥原慎平)

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