(月刊「丸」・昭和42年4月号収載)
コックピットの中で、私は不快さに身じろぎし、腰をゆすって座席にすわりなおした。そして腰から下も下着までグッショリと汗にぬれているのに、思わず顔をしかめて舌打ちした。昭和十八年四月十八日七時半に南太平洋ソロモン諸島のガダルカナル島にあるヘンダーソン基地を離陸してから、すでに一時間半がすぎている。
――いったい俺たちはこんなことまでして、何をやろうってんだ。もしも計画どおりに事がはこぶとしたら、ちょっと話がうますぎる。まったくのところ、そんなうまい話なんてこの世には、ハリウッド映画の中でだけしか出てきやしないだろうからな。