公明「スクラップも必要」 自衛隊の継戦能力に注文

与党国家安全保障戦略等に関する検討ワーキングチームに臨む自民党の小野寺五典安保調査会長(左から2人目)と公明党の佐藤茂樹外交安保調査会長(左)ら=2日午後、国会内(矢島康弘撮影)
与党国家安全保障戦略等に関する検討ワーキングチームに臨む自民党の小野寺五典安保調査会長(左から2人目)と公明党の佐藤茂樹外交安保調査会長(左)ら=2日午後、国会内(矢島康弘撮影)

国家安全保障戦略など「安保3文書」改定に向け自民、公明両党が2日に開いた実務者協議は、自衛隊が敵の侵攻を退けるまで戦い続けることができる「継戦能力」が焦点となった。日本の防衛力整備は航空機や艦艇といった正面装備が優先され、弾薬の備蓄や輸送・補給ルートの確保、攻撃に耐え得る施設といった継戦能力はおろそかにされてきた。自公は継戦能力の必要性では一致するが、財政的な制約もあり、何をどこまで手当てするかには温度差もある。

「スクラップ(廃止)も必要だ」

2日の会合では、継戦能力の大幅な充実を訴える自民に対し、公明側からは不要な装備や予算の見直しもすべきだとの注文が付いた。協議会メンバーの公明議員は「財源もからむ話で、何もかもというわけにはいかない」とクギを刺す。

ただ、自衛隊を取り巻く状況は切実だ。南西諸島有事の際に戦闘を継続できる期間について、ある自衛隊関係者は「持って数日間だ」と厳しい見方を示す。岸田文雄首相も国会で「必ずしも十分ではない」と答弁し、継戦能力の不足を認めた。自民議員は「自衛隊の最高指揮官として本来は望ましくない発言だが、そこまで深刻な問題だということだ」と語る。

代表例が弾薬だ。防衛省関係者は敵が発射した弾道ミサイルを撃ち落とす自衛隊の迎撃ミサイルについて「必要量の6割程度しか確保できていない。抑止の観点からも問題だ」と重々しく明かす。

弾薬にかける予算は過去30年、年間2千億円程度に抑えられてきた。自衛隊は海上発射型の迎撃ミサイル「SM3」と地上発射型の誘導弾「PAC3」で弾道ミサイルに対応するが、いずれも近年は技術の高度化に伴い、調達価格が上昇。十分な数量を確保できない状況に追い込まれている。

部品不足も深刻だ。航空機や艦艇など主要な装備品の使用可能な割合を示す「稼働率」は5~6割程度に低迷する。航空自衛隊では整備中の機体から別の機体のために部品を外す「共食い」と呼ばれる整備が10年以上前から常態化し、その件数が年間3千件以上あることが明らかになった。

これらは自衛隊の練度にも直結する。海上自衛隊の固定翼哨戒機は部品不足で稼働率が落ち、訓練の機会が大幅に削られている。平成18年からの15年間で個人訓練は7割、チーム訓練は2割にまで回数が落ち込んだ。

自衛隊施設の老朽化も著しい。約2万3千棟の4割程度が昭和56年の建築基準法改正前の旧耐震基準で建てられ、うち約8割が耐用年数を過ぎている。有事の際の作戦能力を確保するためにも、主要施設の構造強化や地下化といった取り組みが欠かせない。

また、南西諸島では大型艦艇を接岸できる港湾や自衛隊機が離着陸できる空港が少なく、輸送力不足も指摘される。弾薬や装備など後方支援物資を保管する「補給処」も南西方面では九州に1カ所あるだけだ。

2日の協議会では、継戦能力の議論を継続することも提案された。高まる中国や北朝鮮の脅威と財政的制約のはざまで、最適解が求められている。(市岡豊大、石鍋圭)

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