広がる「手話」 デフリンピックで環境整備に期待

全国高校生手話パフォーマンス甲子園の開会式で、佳子さまは手話であいさつされた=9月、鳥取県倉吉市(安元雄太撮影)
全国高校生手話パフォーマンス甲子園の開会式で、佳子さまは手話であいさつされた=9月、鳥取県倉吉市(安元雄太撮影)

聴覚障害者のスポーツの祭典「デフリンピック」が3年後、国内で初開催されることが決まった。「きこえない人、きこえにくい人、きこえる人」が協働でつくる共生社会の実現を掲げる大会に先駆け、中心会場となる東京では9月、手話の理解と普及を促す「手話言語条例」が施行。同様の条例は各地で制定されており、教育現場や災害時など、さまざまな場面や世代で手話を活用する取り組みも広がっている。(緒方優子)

環境整備の機会に

「開催地に選ばれたことを心から誇りに思います」

先月10日。2025年デフリンピックの日本開催決定を受けて、全日本ろうあ連盟の石野富志三郎(ふじさぶろう)理事長は手話の動画でこうコメントし、喜びを表現した。

身体、視覚、知的障害の選手が出場する「パラリンピック」には聴覚障害の枠がなく、デフリンピックは「ろう者の五輪」とも呼ばれる。陸上競技でスタートを知らせるランプなど目で分かる工夫が特徴で、東京大会では70~80の国・地域から5千~6千人の選手参加を見込む。

大会を契機に、手話通訳の確保や情報バリアフリー化などの環境整備に期待が寄せられており、都や連盟など関係機関が準備を進めている。

動画の活用進む

聴覚障害者が暮らしやすい環境整備をめぐっては、手話を「言語」として普及する「手話言語条例」の制定が各地で進んでいる。同連盟のホームページによると、10月21日現在で条例が成立したのは東京を含め34都道府県、区市町村も合わせると459自治体に上る。

平成25年に全国で初めて条例が制定され、〝手話の聖地〟とも呼ばれる鳥取県は今年6月、独自に小学生向けの手話検定「手話チャレ」の運用を始めた。

動画で日常のあいさつや食べ物、動物などの手話を学ぶことができ、レベル1~10のうち、今年度はレベル5までを配信。「低学年から学べる内容」(担当者)といい、すでに県内の小学生25人が「レベル1」に合格しているという。

「ユーチューブ」などの動画サイトでは、条例を制定した自治体がさまざまな手話動画を配信している。

福島県郡山市では、新型コロナウイルス禍なども背景に、医療現場で活用できる「医療編」の手話動画を配信。そのほか、災害時に耳の不自由な人に避難を呼びかける「防災サイン」(鳥取県)、接客を想定した手話応対(北海道釧路市)など、ニーズに応じた手話を紹介しており、「職員が手話を学ぶ機会にもなっている」(釧路市の担当者)という。

佳子さまも

各地の条例制定の動きとともに、平成26年に始まった「全国高校生手話パフォーマンス甲子園」は、障害の有無にかかわらず、若い世代が手話に親しむ機会になっている。9月に行われた第9回大会では、60チームの予選を勝ち上がった12県15チームが、手話による演劇やダンスを披露した。

この大会を第1回から見守られてきたのが、秋篠宮ご夫妻の次女、佳子さまだ。ご自身も手話を学び、参加した高校生らと手話で交流されてきた。

「手話言語に対する理解がより一層深まり、誰もが安心して暮らすことのできる社会に」。今年の大会では、約5分間のスピーチをすべて手話で行い、共生社会の実現に期待を寄せられた。

手話言語の法制化

手話が独自の文法を持ち、音声言語と対等な「言語」であるという認識を広め、聴覚障害のある人が手話を身に付ける機会や学習権を保障し、誰もが手話を使える環境を確保することなどが目的。全日本ろうあ連盟などが法制化を目指し、条例が施行された自治体では市民への普及啓発や、手話通訳制度の充実などの事業が予算化されている。

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