「台湾エクセレンス」が発信するイノベーション E-Bike、eスポーツ、電子ペーパーが暮らしを変える

イノベーティブ(革新的)な価値を次々と提案する台湾製品への関心が高まっている。人口約2340万人(2021年12月時点)と日本の5分の1程度という地域内市場の小ささをはね返すため、世界を視野に入れた技術やデザイン、マーケティングを展開して独自の地位を確立。半導体やICT、スポーツなど先進的な産業で国際市場をリードする。1993年から優れた製品を表彰し、発信してきた「台湾エクセレンス賞」が象徴するイノベーションの源泉を探った。

脚力のない人も山道や長距離サイクリング

富士山や駿河湾の美しい景色を望む、高低差の大きいルートがサイクリストの心をくすぐる伊豆半島。その中心“へそ”の位置に、台湾の高級自転車メーカー、メリダの運営する体験型施設「MERIDA X BASE」(静岡県伊豆の国市)がある。4月に新設した屋内コースなどを抜け、国内全車種のレンタルが可能なエクスペリエンスセンターに入ると、150台以上の展示を見下ろす壮観な光景が広がった。

MERIDA X BASEはエントリーモデルからレース仕様車まで常時150~200台がレンタルできる。
MERIDA X BASEはエントリーモデルからレース仕様車まで常時150~200台がレンタルできる。

世界的なレースで実績を残すメリダのロードバイクやマウンテンバイクから、キッズモデルまでそろうなか、急速に人気が高まっているのが「E-Bike」と呼ばれるスポーツタイプの電動アシスト付き自転車だ。6車種のラインアップのうち最上級の「eONE-SIXTY 9000」はフレームに内蔵するインチューブバッテリーで低重心の安定した走行とスマートなデザインを実現し、2020年の台湾エクセレンス銀賞を受賞した。

「インチューブ化しても、剛性を保つフレームづくりに高い技術力が表れている」。メリダジャパンブランドマネジメント部の原藤豊部長はこう説明する。重量のあるバッテリーは車体の上部や後部に搭載すると不安定になりがち。これに対し、インチューブ化は重心を下げられるが、フレームは楕円(だえん)が欠けたような形状になり剛性の確保が難しい。

eONE-SIXTYのインチューブバッテリー。メリダの成型技術でカーボンフレームの下部に内蔵する設計を実現した(左上)MERIDA X BASEは4月に新設した屋内のパンプトラックコース(右上)や、伊豆の街並みを眺めながらのサイクリング体験も提供する(左下)メリダの台湾工場は最多400種類の特性の異なるカーボンを積層し、薄く軽量ながら剛性も高いフレームを製造する(右下)
eONE-SIXTYのインチューブバッテリー。メリダの成型技術でカーボンフレームの下部に内蔵する設計を実現した(左上)MERIDA X BASEは4月に新設した屋内のパンプトラックコース(右上)や、伊豆の街並みを眺めながらのサイクリング体験も提供する(左下)メリダの台湾工場は最多400種類の特性の異なるカーボンを積層し、薄く軽量ながら剛性も高いフレームを製造する(右下)

メリダは軽量かつ剛性の高いカーボンを採用し、世界水準の成型技術を持つ台湾工場で最適な設計とデザインを実現した。結果、eONE-SIXTYシリーズは注文に生産が追い付かない状態だという。

福田三朗社長は「E-Bikeならば脚力に自信のない人も山道や長距離ルートを楽しめる。トレーニングが主流だった伊豆半島のサイクリング体験を、観光客などより幅広い層に広げたい」と期待を込めた。

専門家140人の厳正な現場選考

「イノベーションが生活に変化を生み出す」を掲げる台湾エクセレンス賞は、日本の経済産業省に相当する台湾の経済部が国内外への製品のプロモーションを目的に創設した。毎年6月に募集を呼び掛け、例年1000件以上の応募から書類審査を通過した製品を対象に「現場選考」を実施する。各分野の専門家約140人が広大な会場に並ぶ実物を見て「研究開発」「デザイン」「マーケティング」「品質」の4項目で厳正に審査し、受賞製品を決定する。

台湾エクセレンスの現場選考会場。応募の多さを反映して広大なスペースで行われる。
台湾エクセレンスの現場選考会場。応募の多さを反映して広大なスペースで行われる。

さらに、最も革新的な価値が認められた上位10製品に金賞、続く20製品に銀賞を授与。総合的な評価や注目度の高さから、米アカデミー賞の通称をとって「台湾産業界のオスカー賞」ともいわれるという。受賞製品は政府レベルで認められた証明として台湾エクセレンスのシンボルマークを使用し、消費者や販売先にアピールできる。

また、米国やアジアなど各国で定期的に歴代の受賞製品を集めたプロモーションイベントを開催している。日本でも今年8月に台湾発のカルチャー体験型店舗が展開する「誠品生活日本橋」(東京)店内にポップアップストアを開き、21社104製品が並んだ。9月には上野公園(同)で開催されたカルチャーフェスティバル「TAIWAN PLUS」に出展するなどさまざまなイベントを通じて、台湾ブランド・企業の発展と認知向上を目指している。

湾曲モニターの圧倒的な没入感

なかでも近年、市場の急成長を反映してeスポーツ関連の受賞が目立つ。世界のゲーミングシーンを牽引(けんいん)する台湾メーカーMSIは業界最高水準の湾曲率1000Rを誇る曲面モニターを発売し、22年の台湾エクセレンス賞に選ばれた。

湾曲率1000Rのゲーミングモニターは画面中央から端への視線移動による目の負担も減らすという。
湾曲率1000Rのゲーミングモニターは画面中央から端への視線移動による目の負担も減らすという。

半径1メートル(1000ミリ)の円に相当するカーブを描く画面は従来品より丸みが増し、映像に包まれる錯覚に陥る。エムエスアイコンピュータージャパンの江富盛社長は「プレーヤーの視覚を覆うことで圧倒的な没入感を体験してもらえる」と効果を語る。

エムエスアイコンピュータージャパンの江富盛社長
エムエスアイコンピュータージャパンの江富盛社長

人間の眼球とほぼ同じ湾曲率という画面は視線の移動距離を縮め、コンマ数秒の判断が勝敗を左右するeスポーツの状況を把握しやすくする。実際に、人気のFPS(一人称視点シューティングゲーム)をプレーすると、突然現れた敵を目の片隅でとらえられた。ほかにも、次世代ディスプレー技術として注目される「量子ドット」を搭載し、色純度の高い発色が可能な高画質モニターをラインアップし、より快適なプレー環境を支える。

ソニー台湾の技術者5人が1986年に創業したMSIは製品開発本部の社員の多くが日ごろからゲームに触れ、マーケティングや営業の部門とも連携してユーザー視点で新たな機能や技術を生み出してきた。例えば、3DゲームやCG制作などに重要な「グラフィックスカード」の冷却ファンや、高性能なゲーミングPCの発熱による機能低下を防ぐ独自の強力な冷却システムを開発し、長時間プレーへのニーズに応えている。

MSIのノートPCは長時間のハードなゲーム操作にも対応するため、独自開発の強力な冷却システムを採用している。
MSIのノートPCは長時間のハードなゲーム操作にも対応するため、独自開発の強力な冷却システムを採用している。

江社長は「新たな取り組みを続けるチャレンジ精神や、高品質なモノを作っていきたいという職人文化を創業者から継承している」と話す。MSIはeスポーツのプロチーム20以上をサポートし、大会も主催・協賛してユーザーの情熱に向き合い、次のイノベーションを見据えている。

紙消費抑えCO2削減

サステナブル(持続可能)な社会に技術で貢献する台湾企業もある。電子書籍端末や棚札に使われる電子ペーパー市場で高いシェアを誇るE Ink(イー・インク)だ。テレビやPC向け液晶ディスプレーメーカーとして1992年に設立したが、価格競争が激しくなった2000年代に入り事業構造を転換。有望市場として電子ペーパーに着目し、経営資源を振り向けてきた。

日本でも三越伊勢丹やビックカメラなどの棚札に採用されるイー・インクの製品は、プラスチックフィルムに電圧で移動する粒子のインクを塗布・制御して書く方式を採る。繰り返し使えてエコなうえ、表示は光源を使わない「反射式」で情報を書き換える際にのみ電力を使う省エネルギーが特徴。さらに、19年にはカラー化に成功して表現力を高め、21年に投入した主力製品「カレイドプラス」で台湾エクセレンス銀賞を受賞した。

イー・インクの電子ペーパーは主要な電子書籍端末で採用されている。
イー・インクの電子ペーパーは主要な電子書籍端末で採用されている。

イー・インクは過去5年間で電子書籍端末1億3000万台と、電子棚札約4億個を販売。紙の消費量を減らして原料となる木材約2200万本の伐採を防ぎ、二酸化炭素(CO2)排出量237万トンの削減につながったと試算する。国連が策定するSDGs(持続可能な開発目標)達成への機運が高まるなか、日本企業とも連携し新たな製品・サービスの開発を続ける。イー・インクは「紙から電子ペーパーへの移行は、CO2排出量削減につながるデジタル・イノベーションだ」といっそうの普及を期した。

「柔軟な発想と起業家精神でニーズに応える」 東京国際大教授 河崎眞澄氏

台湾がイノベーションを生み出す背景について産経新聞台北支局長(2002~06年)を務め、産業政策にも詳しい東京国際大国際関係学部教授の河崎眞澄氏に聞いた。

「1990年から30年以上にわたって現地を取材するなかで、国際社会の台湾への注目が最も集まっている。民主的で自由なライフスタイルへの共感が広がり、メード・イン・タイワンの信頼性も高まった。

もともと域内市場に限界があるため、米国や日本など海外市場を志向するグローバルな視点が養われている。エレクトロニクスなど日本の製造業の進出も盛んで、厳密な品質管理や生産技術の土台が根付いた。さらに台湾が尊重する柔軟な発想や起業家精神という価値が加わって、潜在的なニーズに応える先進的な製品を世に送り出している。結果、OEM(相手先ブランドによる生産)からスタートし、いまでは世界的なブランド力を誇るメリダのように、21世紀に入って台湾企業への認知や高い評価が確立した。

台湾エクセレンスのように時代の先をいく価値を提案し、イノベーティブな製品が人々の生活に幸せをもたらす。そんな台湾の製品を手に取って使うことで、台湾の人々が持つ幸福感に触れられると思う」

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