深層リポート

沖縄発 危うき知事の国連提起表明 中国の介入招く恐れも

国と沖縄県が激しく対立する米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐり、玉城デニー知事が国連に問題提起する意向を表明したことが、一部で波紋を広げている。中国などの介入を招き、かえって沖縄の平和を危うくする恐れもあるからだ。国連への提起は、沖縄の日本からの分離を進める勢力にも利用されているといい、県内の保守派議員らが警戒を強めている。

介入に期待?

波紋を呼んだのは、9月11日の知事選で再選を果たした玉城氏が、翌日の地元紙インタビューで語った内容。玉城氏は「辺野古反対で県民が1ミリもぶれていないことが(知事選で)証明された」とし、「国連や国際社会の場で県民が、なぜこのように(移設反対を)訴えているのか幅広く語る」と強調した。

外交や安全保障は国の専管事項だが、玉城氏は「政府にカウンターパート(対応相手)を求めるより、世界に問題提起するほうが、幅広いカウンターパートが現れる」とも語り、外国勢力の介入に期待するかのような姿勢もみせた。

これに対し、県内の保守系市町村議でつくる議員連盟は9月下旬、玉城氏に要請書を提出。基地問題を国連などに訴える前に、しっかり議論するよう求めた。

議員連盟の代表、崎浜秀昭・本部(もとぶ)町議は「県民や国民のコンセンサスが得られないまま、外圧を利用するようなやり方は危険だ。基地のことが国際問題化すれば、有事の際に同盟国が日本への軍事支援を躊躇(ちゅうちょ)する恐れもある」と指摘する。

国内で議論を

保守派が危ぶむのは、日本と沖縄が無理やり分断されることだ。

〝あしき前例〟もある。国連の自由権規約委員会が2008年、日本政府に対し、沖縄の人々を「先住民族」と認め、土地などを侵害してはならない-と勧告したのである。

県民の大多数は自身を普通の日本人と考えており、「先住民族」かどうかが県議会などで議論されたことはない。しかし県内の一部勢力などの働きかけで、同様の国連勧告が繰り返し出される事態になった。

保守系市町村議の議員連盟は昨年12月、この勧告の撤回を求めて玉城氏に公開質問状を送り、国連への働きかけに対する認識をただしたが、関係者によれば明確な回答は得られなかったという。

議員連盟事務局の仲村覚氏は「国連の一方的な勧告は、沖縄の地方自治を侵害するものだ」と指摘したうえで、玉城氏が国連に基地問題を訴えれば「喜ぶのは中国やロシアであり、将来、沖縄に侵攻する口実を与えかねない」と危惧する。

一方、玉城氏を支持する「オール沖縄」関係者は、「辺野古ノーの『民意』を無視する日本政府にこそ問題がある。新基地反対は知事の公約であり、国連演説などを含め、あらゆる機会をとらえて訴えることは当然だ」と評価する。県の担当課によれば、玉城氏が国連などで演説することは既定方針で、「どのような場で発言するのが有効であるか検討中」としている。

これに対し県内の経済界からは、国連演説が国との対立をさらに激化させるとし、疑問視する声も上がっている。

沖縄「先住民族」に関する国連勧告】 沖縄の人々を「先住民族」と認め、権利や伝統文化、言語を保障するよう求める勧告。2008年から18年にかけ、国連の自由権規約委員会と人種差別撤廃委員会が計5回にわたり出した。日本政府は「日本にはアイヌ民族以外に少数民族はおらず、沖縄の人々は日本民族で、人種差別撤廃条約の適用対象にならない」と否定している。

記者の独り言

沖縄の人々が人種的に日本人であることは明白だが、「抑圧された先住民族」であり、「日本政府に基地負担を押し付けられている」と国連で訴えればどうなるか。米国をはじめ西側諸国は相手にすまい。しかし中国は、もろ手を挙げて賛同するだろう。人民解放軍が沖縄を「解放」する口実にもなる。基地問題を国連に訴える前に、その反作用について、よくよく考えてほしい。(川瀬弘至)

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