放射線治療機器「ZAP-X」国内初導入、脳腫瘍治療向上に期待

診療所でも設置可能

もうひとつ、ZAPの大きな特徴は放射線を外部に漏らさない仕組みです。これは、鋼鉄や鉛、タングステン合金の組み合わせにより可能となりました。サイバーなど他の放射線治療機器は大型であるうえ、放射線を遮断するためには、厳しい管理基準を満たさなければなりません。このため、機器の周囲を分厚いコンクリートで囲むなど、大がかりな工事を必要とするので、地域の拠点病院レベルの大きな病院でなければ設置は不可能でした。

ZAPは、床面が機器を支えるだけの耐性があり、一定の広さがあれば設置に問題がないため、設置場所は地上階でガラスに面した場所でも可能です。メンテナンスの費用も小さくなりました。つまり、拠点病院レベルの大病院でなくても、地域の一般病院やクリニックでも設置が可能なのです。患者さんへの治療機会はより迅速に与えられ、身近に治療が行えるようになりました。

がんへの効果期待

転移性脳腫瘍は、肺がんや乳がんで起こりやすいことが知られています。脳転移の確率が一番高い肺がんは脳転移を定期的に調べますが、二番目に多い乳がんは脳よりも他の臓器への転移の頻度が高いため、どうしても脳転移を定期的に調べる習慣がありません。しかし、脳転移による死亡率は肺がんが1割に対し、乳がんは4割にのぼるという報告もあります。また乳がんはステージⅠ、Ⅱでも脳転移がみつかることもあります。もし、ZAPが広く普及すれば治療機会は格段に増えます。乳がんは放射線治療の感受性が高いといわれており、脳転移による乳がん患者の死亡率の減少にも一役買えるのではないかと期待しています。

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