害虫の「世界王者」にアリの足跡物質が有効 京大などが発見 化学農薬脱却に可能性

多くの農薬に耐性を持ち農作物に深刻な被害をもたらす「害虫の世界王者」とも呼ばれるハダニが、アリの足跡に含まれる物質を避けることを発見したと、京都大などの研究グループが発表した。この性質を利用することで、人体や環境に無害な自然由来の農薬で農作物を守れる可能性があるほか、ハダニの耐性発達を抑えられるという利点もある。研究グループは「発想の転換で、化学農薬に頼るやり方から脱却できる可能性が出てきた」としている。

研究グループによると、ハダニは全世界に生息し、リンゴやナスなど1千種類超の農作物を食い荒らすが、体長約0・5ミリと小さく、葉や実が枯れる症状が出るまで発生に気づかないことも多い。また、約10日で世代交代するため、新たな農薬を開発しても耐性がつきやすく特に防除が困難な害虫だという。

研究グループは、ネコを飼うとネズミがネコを恐れて姿を見せなくなるといった自然原理に着目。ハダニを捕食するアリなどを使い、ハダニが敵であるアリと遭遇しないため、どのように警戒しているのかを調べた。

ハダニの一種であるカンザワハダニと、ハダニを捕食するアミメアリ(京都大提供)
ハダニの一種であるカンザワハダニと、ハダニを捕食するアミメアリ(京都大提供)

実験では、アリの足跡がついた葉片とついていない葉片を並べて約80匹のハダニがどちらを選ぶかを調査。その結果、7割以上のハダニが足跡つきの葉片を避け、茎を使った実験でも同様の傾向があった。さらにアリの足跡そのものではなく足跡から抽出した成分を使っても、ハダニが同様の反応をすることが確認できたという。

研究グループは、新たな農薬に含まれるアリの足跡成分を恐れずに行動するハダニが出てきたとしても、その多くは本物のアリに捕食・淘汰(とうた)されるため、これまで懸案だった耐性発達の課題についてもクリアできるとした。

新たな農薬についてはすでに特許を出願した。今後ハダニとアリの関係や足跡成分の分析をさらに進める予定で、研究グループの京都大大学院農学研究科、矢野修一助教は「自然なやり方で害虫を抑えることのできる手法を解明していきたい」としている。

研究成果は25日付の国際学術誌電子版に掲載された。(杉侑里香)

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