(月刊「丸」・昭和42年4月号収載)
私が南太平洋ソロモン諸島ブーゲンビル島の密林の中で発見した黒褐色の妙なものは、大きな双発機、一式陸上攻撃機の胴体の部分であった。
その周囲約三、四平方十メートルの地域に、十一名の遺体が見えるなかに、ひときわ目を引くものがあった。それは機の座席に着き、胴紐も締めたままで黒漆塗りの古刀そのままの軍刀を右手に固く握りしめ、機体の向きと平行にあたかも指揮所の椅子に腰かけ、生ける者のごとき(帽子は飛んで無帽)一人があり、私はこの特異な人に好奇の目をむけて階級章を見ると、大将である。