コロナの感染者減「2類」相当見直さぬ理由は

多くの人でにぎわう大阪の繁華街・ミナミ=21日午後、大阪市中央区(安元雄太撮影)
多くの人でにぎわう大阪の繁華街・ミナミ=21日午後、大阪市中央区(安元雄太撮影)

新型コロナウイルスの感染症法上の扱いを巡る議論が一向に進まない。政府は当初、感染拡大「第7波」の収束後に見直しを検討するとしていたが、感染者が減少した今も具体的な動きは見えない。背景にあるのは、今冬に想定されるインフルエンザとの同時流行の懸念。だが地方からは、現状の位置づけでは「むしろ同時流行を乗り切れない」との異論も出ている。

「新たな変異が生じる可能性がある。コロナとインフルエンザがともに感染拡大するリスクもある」

コロナの感染症法上の分類見直しについて、岸田文雄首相は18日の衆院予算委員会で重ねて否定的な見解を示した。ただ「最後は政治の判断」とも述べた。

コロナは感染症法上で結核などと同じく、危険度が上から2番目に高い「2類」相当の「新型インフルエンザ等感染症」に位置付けられている。受診できるのが指定医療機関などに限られるが、これが「5類」相当になると、季節性インフルエンザのように一般の医療機関でも対応が可能になる。

過去最大の流行となった第7波では、政府はオミクロン株の派生型「BA・5」の特性などを踏まえ、ウィズコロナのあり方を模索。発症者が自宅療養のため待機する期間を原則10日間から7日間に短縮したり、感染者の全数把握を簡略化したりした。こうしたステップを踏み、政府も当初は第7波収束後にコロナの感染症法上の扱いを見直す方向で検討していた。

10月20日の全国の新規感染者は約3・6万人。増加傾向に転じたとみる専門家もいるが、連日25万人前後の感染報告が続いた8月のピーク時と異なり、医療機関の逼迫(ひっぱく)は解消されている。見直しに向けた議論の環境は整ったといえるが、動きは鈍いままだ。

背景には何があるのか。「インフルエンザと同時流行の可能性がある今、最悪の事態に備えることが第一」と話すのは、政府の新型コロナ対策分科会メンバーで東邦大の舘田(たてだ)一博教授(感染症学)だ。

海外の状況を踏まえ、厚生労働省は今冬、1日あたり計75万人のコロナとインフルの患者発生を想定している。舘田氏はこの膨大な数字を念頭に、政府の慎重姿勢に理解を示し、制度設計を含めた見直しのタイミングは「第8波が落ち着きだしたころになるのでは」とみる。

仮に同時流行があれば発熱患者は爆発的に増え、救急や外来診療が逼迫する可能性は高まる。そのため厚労省は、重症化リスクが低い人にはコロナの検査キットやインフルエンザのオンライン診療の活用を促すなど対応策を示している。

ただ今夏、2類相当の〝弊害〟に直面した現場からは、現状維持の政府姿勢は「事なかれ」と映る。

「ウイルスとどう向き合うか、方向性が全く見えない。第8波は必ず来る。出口を示す上でも、(見直しを)なし崩しでやるべきではない」。大阪府の吉村洋文知事は19日、記者団にこう述べ、感染症法上の位置付けの見直し議論を早急にまとめるよう国に求めた。

2類相当のままでは、コロナ感染者は特定の医療機関にしか入院できず、「インフルとの同時流行に対応できない」(吉村氏)。同時流行を警戒するがゆえにコロナの位置付けを厳格なままにしておこうという政府の発想とは逆に、5類相当に緩和することで、コロナ非対応病院を含めた間口の広いオール医療体制で、第8波に臨むべきだと訴える。

そして2類相当を維持しながら、水際対策の緩和や全国旅行支援を優先させた政府の動きに「順番があべこべだ」と批判した。

地方議会も動く。「感染者が無症状や軽症で済む例が多くなっている。『5類』相当に引き下げることを強く求める」。滋賀県議会は14日、こうした意見書を可決し、現状に即した対応を国に要請した。

企業の危機感も強い。1万1935社から回答を得た帝国データバンクの8月の調査では、5類相当への変更を望む企業が51・1%に上った。一方、2類相当の維持を求めたのは12・3%にとどまっている。引き下げを望む企業からは「いつまでも経済活動が元に戻らない」「中小企業では社員の自宅待機が相当な重荷になる」との声が寄せられた。(前原彩希)

■「2類と5類の中間」定まらぬ危険度が保健所の負担に

感染拡大「第7波」の教訓から改められたのが、9月26日から全国一律で導入された新型コロナウイルス感染者の全数把握の簡略化だ。全体の8割を占めるとされる若年の軽症者らについては詳細な患者情報の把握が不要となり、年代と総数のみを報告すればよくなった。

これで医療機関による政府の情報共有システム「HER―SYS(ハーシス)」への入力の手間は軽減されたとみられるが、保健所行政の現場からは「大きな変化はない」と不満もくすぶる。

大阪府内のある保健所では医療機関のハーシス入力を一部代行しているが、全数把握が続いていた当時から入力作業は外部委託しており、主な業務は重症化リスクのある感染者への健康状況の聞き取りや深夜の入院調整だった。コロナが2類相当である以上、この業務に変わりはなく、第8波がくればまた逼迫するのも目に見えているという。

別の保健所の担当者も「届け出を見直しただけで事実上の全数把握は続いている」とこぼす。詳細な報告の対象外となるコロナ患者が自ら登録する「陽性者登録センター」の情報に基づき、希望する感染者には配食サービスや宿泊療養の案内が必要となるためだ。

「実質的には『2類』と『5類』の中間のような扱いになっているのに、『2類』相当である以上、続けなければいけない業務が多い。分類を見直さないと負担軽減にはつながらない」と嘆いた。(北野裕子)

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