ポトマック通信

乱射事件が起きた教会で自警団 銃に依存する米社会の構造

先月、テキサス州サンアントニオ郊外のサザーランドスプリングスにあるバプテスト教会を訪ねた。2017年11月、乱入した男が礼拝中の26人を銃で殺害。礼拝施設で最悪の銃乱射事件が起きた。その礼拝堂を、教会員のデビアさんが案内してくれた。

犠牲者がいた場所に一人一人の名を記した椅子が置かれていた。「クリスタル、娘のエミリー、クリスタルのおなかにいた赤ちゃん」。10歳から教会で育ったデビアさんが声をつまらせた。「私も妊婦だった」

日曜の朝、自家用トラックが故障した。夫はテネシーに出張中。デビアさんは身重の体に負担になるタイヤ交換を諦め、子供と礼拝を休んだ。「生きているのは偶然」

元軍人の犯人は約11分間の銃撃の後、武装して駆けつけた近所の男性と交戦し負傷。逃走の末、車内で自殺した。「銃を持った者が人の命を救った」。デビアさんは米国憲法修正第2条(銃を所持する権利)を「自分たちを守るために、とても大事」と疑わない。

事件後、地域の多くの教会で自警団がつくられた。デビアさんの夫も教会で腰に拳銃をつけていた。多くの血が流れた南部の教会でも、銃は安全のために欠かせない。悲惨な事件が繰り返されるがゆえに、銃に依存する米社会の構造を垣間見た。(渡辺浩生)

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