史料軽視再び 裁判記録「原則保存」法制化求める声も

最高裁判所=東京都千代田区
最高裁判所=東京都千代田区

神戸市須磨区で平成9年に起きた連続児童殺傷事件で、当時14歳で逮捕された加害男性の全事件記録を神戸家裁が廃棄していたことが明らかになった。裁判記録の保存を巡っては令和元年、違憲か合憲かが争われた重要裁判の記録が廃棄されていたことが問題に。今回、史料的価値が高いとみられる少年事件の記録廃棄が相次いで判明したことで、裁判所の文書管理のあり方が改めて問われるのは必至だ。

最高裁の内規では、一般的な少年事件の場合、捜査書類や審判記録は成人後26歳になるまで保存すると規定。史料価値の高い資料は例外とされ、期間満了後も「特別保存」という枠組みで永久保存される。平成4年の通達で最高裁が対象を例示しており、社会の耳目を集めた事件などがこれに該当する。

ただ、司法文書の管理に詳しい龍谷大の福島至(いたる)名誉教授は「こうした最高裁の内規や通達は内輪のルールに過ぎない」と指摘。今回廃棄された連続児童殺傷事件は特別保存になっておらず、適用基準の曖昧さは否めない。福島氏は「全ての裁判記録を対象に、国立公文書館での原則保存を法制化すべきだ」と訴える。

米国では原則的に重要裁判の記録が永久保存され、閲覧が可能だ。国内で公文書の保存期間が定められている理由の一つに場所の確保が挙げられているが、福島氏は「電子媒体で保存すればデメリットはなくなる」と話す。

特別保存となっていない少年事件の記録は裁判官の許可がなくても少年首席書記官の指示で廃棄できるといい、判断が現場任せになっている可能性がある。

こうした現状を踏まえ、東京地裁は一昨年、最高裁の判例集に載ったり、主要日刊紙2紙以上に記事掲載されたりした民事裁判の記録を永久保存とするなど客観的基準にのっとり管理する運用を始めている。

福島氏は「まずは公文書が国民共有の知的資源だという考えに立脚し、保存のあり方を議論すべきだ」と求めた。

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