【北京=三塚聖平】開催中の中国共産党大会で、習近平総書記(国家主席)が「反腐敗闘争」の成果をアピールしている。習氏は反腐敗を推進する過程で敵対勢力を失脚させ党内基盤を固めてきており、最近も公安・司法部門で摘発を強化。党大会では反腐敗継続で党内を引き締める方針を示しており、異例の3期目に対する反発や異論を封じる構えだ。
習氏は16日に行った中央委員会活動報告で「腐敗は党の生命力と戦闘力を害する最大の悪性腫瘍だ」と述べ、反腐敗闘争の成果を誇示した。肖培(しょうばい)・中央規律検査委員会副書記も17日の記者会見で「腐敗は、最も政権転覆につながる問題だ」と強調。習指導部発足後の10年間で、規律違反により党幹部を含む464万8千人余りを立件したと説明した。
2012年に発足した習指導部は「トラもハエもたたく」と宣言。腐敗を理由に周永康(しゅうえいこう)・元政治局常務委員ら政敵を次々と失脚させた。最近では、絶大な権力を持つ公安・司法部門で摘発が目立つ。党大会直前の9月には、孫力軍(そんりきぐん)・元公安次官と傅政華(ふせいか)・前司法相に執行猶予2年付きの死刑判決を言い渡した。
習氏が地方勤務時代からの側近として信頼を置く王小洪(おうしょうこう)氏を公安相に就任させるなど、習氏の権力基盤をさらに固める人事が公安・司法部門で進む。許甘露(きょかんろ)・公安次官は今月19日の会見で「敵対勢力による浸透、転覆、破壊活動を厳しく取り締まる」と述べ、習政権を脅かすような動きを封じる姿勢を示した。
一方、習氏とともに反腐敗闘争を主導した王岐山(おうきざん)国家副主席(74)には引退の観測が出ている。王氏は、16日の党大会開幕式を欠席。外遊後の隔離が原因とみられるが、今月上旬には王氏の元秘書が規律違反の疑いで党籍剥奪処分を受けており、王氏の影響力低下が指摘される。
また、香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは19日、王滬寧(おうこねい)・政治局常務委員(67)が最高指導部に残り、全国人民代表大会常務委員長のポストに就く可能性を報じた。李克強首相(67)が同ポストに就任するとみられていたが、李氏が最高指導部から退く可能性が浮上している。