【台北=矢板明夫】香港の李家超行政長官は19日、就任後初めて施政方針演説を行った。立法会(議会)で2時間以上にわたり、香港の経済発展、社会福祉、人材確保など今後の政策方針を説明した。7月に行政長官に就任した李氏は、北京の中央政府の指示を受け、言論弾圧を続けるなど中国寄りの政策を推進しており、方針演説に対する香港民主派からの評価は冷ややかだ。
李氏は演説で、「香港基本法第23条に関する立法を推進する」と強調した。香港の憲法に相当する香港基本法の第23条は、国家分裂、政府転覆、国家機密の窃取などを取り締まる法律を制定しなければならないと規定。しかし、市民団体の猛反対で、歴代の香港政府は法律化できなかった。
李氏が今回、法律化を急ぐ意向を示したことに関し、台湾在住の香港の人権弁護士、桑普氏は「第23条は2020年に中国当局が制定した香港国家安全維持法より(適用)範囲が広く、香港はますます警察都市になる」と指摘。新たな法律は早ければ、来年にも成立するとの見方が浮上している。
一方、李氏は演説で「香港の競争力を強化するため、海外から優秀な人材を集める」と強調した。香港国家安全維持法施行により、香港からは今、海外への移民が急増中。香港メディアによると、今年に入り、少なくとも11万人が英国、米国、シンガポールなどに移民した。富裕層や高学歴の人材の流出が目立つという。
李氏は「地元の人材を積極的に育成する」と力説しつつ、外国の一流大学を卒業した優秀な人材に対し、香港の長期滞在ビザを与える条件を緩和するなどの人材誘致策に言及した。
台湾在住の香港人活動家たちは「自由のない香港に行きたい人材などはいるはずがない」と批判している。