防衛費「40兆円台」の攻防 どこまで関連費か

海上自衛隊観艦式で一列縦隊で航行する訓練支援艦「てんりゅう」(左手前)などの艦船=2015年10月、神奈川県沖の相模湾(酒巻俊介撮影)
海上自衛隊観艦式で一列縦隊で航行する訓練支援艦「てんりゅう」(左手前)などの艦船=2015年10月、神奈川県沖の相模湾(酒巻俊介撮影)

防衛費増額をめぐっては政府内でも議論が白熱している。政府の有識者会議は安全保障全体の支出を算定する「安全保障関連経費」に海上保安庁経費や科学技術費、インフラ整備費を加える見方を示す一方、防衛当局は総額が増えることで防衛費が増えたように見える「水増し」を警戒する。今後5年間の防衛費の規模として「40兆円台」が視野に入る中、防衛費をめぐる議論が本格化しつつある。

「政府全体の資源と能力を総合的かつ効率的に活用し、総合的な防衛体制の強化を検討していく」。9月30日の第1回有識者会議のあいさつで岸田文雄首相は何度も「総合的」という言葉を繰り返した。

今年の経済財政運営の指針「骨太の方針」は北大西洋条約機構(NATO)が加盟国に国内総生産(GDP)比2%の防衛費を求めていることが明記され、事実上の目安を示した。日本の防衛費がこの基準に到達するには、現状のほぼ倍程度の増額が必要だ。

ただ、防衛費が何を指すのかは国際的にも定義付けられていない。政府は3年前、NATO基準を参考に海上保安庁経費や国連PKO(平和維持活動)分担金などを含めた安保関連費を独自に試算。有識者会議では、これを基にサイバーやAI(人工知能)などの防衛装備に関わる科学技術費や、南西諸島での港湾などインフラ整備費を含めるべきだとの主張がなされた。

しかし、令和3年度防衛費の当初予算と補正予算は計約6兆1千億円。海保経費などを含めると計約6兆9千億円でGDP比は1・24%となり、さらに科学技術とインフラを含めれば予算の「発射台」は上昇するが、純粋な防衛関連費は1・09%でしかない。

政府・与党内では5年間で約1兆円ずつ増額し総計で約43兆円とする試算もある。だが、5年目に年間10兆円を超えてGDP比2%に達したとしても、科学技術費など他の経費も増えるため純粋な防衛費の増額幅は抑制される。防衛省幹部は「必要な防衛費が確保できない」と懸念する。

一方で防衛省が今後5年間の必要経費を積み上げた結果、50兆円近くになった。防衛省側は純粋な防衛費のみで40兆円台後半を目指すが、財務当局は有識者会議を舞台に安保関連経費を含めて40兆円台前半とすべく動いている。

もっとも科学技術費については有識者会議でも「先端科学技術はほぼ全て軍民両用で線引きできない」との声もある。戦略3文書を改定する年末までに科学技術費やインフラ整備費の積み上げ作業が可能なのか疑問視する向きもある。

「自衛隊だけで国は守れないが、自衛隊が強くないと国を守れない」。一方でこうした声も有識者会議では出た。結果的に必要な防衛費が確保できるのか議論の行方が注目される。(市岡豊大)

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