岸田文雄内閣の一員である高市早苗経済安全保障担当相が、首相への不満を漏らす場面が目立つ。先月はテレビ番組で、経済安保に関する機密情報の取り扱い資格「セキュリティー・クリアランス(SC、適格性評価)」の制度化に向けた法改正をめぐり、「中国という言葉は出さないでくれと言われた」と暴露して波紋を呼んだ。SCは中国への機微情報流出防止も念頭に置くが、政府は「特定の国を想定したものではない」とのスタンスだ。政府関係者は「必要ない摩擦を起こすような発言は控えてほしい」と眉をひそめる。
SCは、機密情報へのアクセスを一部の民間の研究者・技術者や政府職員に限定する仕組みだ。人工知能(AI)や量子技術など最先端技術に関する機密情報に接する関係者に資格を付与して明確にし、軍事転用が可能な技術や民間の国際競争力に関わる重要な情報が国外に流出することを防ぐ狙いがある。
ハイテク分野で台頭する中国を念頭に、制度導入で先行する米国や欧州の主要国からは、制度を持たない日本との共同研究で機密情報が漏れる可能性が警戒されてきた。放置すれば先端技術に関わる国際共同研究に日本企業が参加できなくなる恐れがある。