麦芽の搾りかすを使った「クラフトビールペーパー」 横浜の取り組みに海外も注目

クラフトビールペーパーを使ったメニュー表、名刺、缶ビール専用のギフト箱など=横浜市中区(高木克聡撮影)
クラフトビールペーパーを使ったメニュー表、名刺、缶ビール専用のギフト箱など=横浜市中区(高木克聡撮影)

人気が高まるクラフトビールの醸造所が集まる横浜市で、製造過程で発生する麦芽の搾りかすを再生紙の「クラフトビールペーパー」としてよみがえらせる取り組みが広がりつつある。搾りかすは焼却などに手間がかかるなど醸造所は処分に頭を悩ませてきたが、単なるリサイクルにとどまらず、付加価値をつけて再利用する「アップサイクル」の技術に海外からも熱視線が注がれている。(高木克聡)

クラフトビールペーパーの事業を展開しているのは横浜市のスタートアップ(新興企業)の「kitafuku(キタフク)」。再生紙の材料に搾りかすを6%ほど配合して生産する。麦芽と同じような茶色い色味が特徴的だが、ビールの香りはしない。同社の松坂匠記さん(33)は「名刺や飲食店のメニュー表などで需要がある」と説明する。

松坂さんは令和元年、「フードロス」問題の解決に向けて同社を設立。奈良市にある紙の卸問屋の知人と飲食店関連の〝残り物〟を使った再生紙作りを目指すようになり、着目したのがクラフトビールの製造過程で発生する麦芽の搾りかすだった。

クラフトビールの醸造所で麦芽の搾りかすを回収する松坂匠記さん(奥)ら(kitafuku提供)
クラフトビールの醸造所で麦芽の搾りかすを回収する松坂匠記さん(奥)ら(kitafuku提供)

搾りかすは水気を含んでいて焼却に手間がかかり、細菌が増殖しやすいため保管も一苦労だという。醸造が不定期で排出量も小規模となるため、回収を請け負う廃棄物業者も少なく、醸造所にとって処理費用が重くのしかかる。家畜の餌や農作物の肥料として再利用もできるが、都心部の横浜では引き取り手を探すのは難しいという。

横浜市中区の複合施設「横浜ハンマーヘッド」にある醸造所「ナンバー ナイン ブリュワリー」ではキタフクに搾りかすを提供し、クラフトビールペーパー製のギフト箱を使用している。缶ビールを宅配便で送りやすいように直方体に組み立てられる一方、折り方を変えると持ち手ができて、持ち運びしやすくなるデザインとなっている。

醸造責任者を務める斎藤健吾さん(48)は「クラフトビールペーパーにお客さんも驚いている。これをきっかけにクラフトビールへの理解がさらに進む」と喜ぶ。

松坂さんは海外の醸造所から問い合わせがあるほか、ドイツやイタリア、韓国などからも取材の依頼が寄せられていると説明。「横浜の醸造所には『みんなで一緒にやろう』というムードがある。横浜発の取り組みとして広げたい」と話す。

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