自民税調、5年度税制改正を始動 防衛費増額や資産所得倍増に向けた税制検討

自民党税制調査会は11日、「インナー」と呼ばれる非公式幹部会を開き、令和5年度税制改正に向けた議論をキックオフした。防衛費の抜本強化に向けた財源確保のため増税を検討するほか、岸田文雄政権が掲げる「資産所得倍増プラン」の柱として少額投資非課税制度(NISA)を拡充するなど、例年になく大型の案件が多い年となる。

会長には宮沢洋一氏が続投し、税調の実務を取り仕切る小委員長には塩谷立氏が就いた。宮沢氏は11日の会合後、記者団に対し「昨年、一昨年はわりあい大きな改正項目がない年だったが、今年はかなり大きな問題がある」と指摘。ただ、増減税などの方針をまとめた与党税制改正大綱は、例年通り12月中旬までに決定したいとの考えを示した。

インナーには党内の実力者が名を連ね、業界団体や省庁間の利害を調整する役割を担う。政府は与党大綱の内容を税制改正関連法案に反映するため、実質的に税制を決める機能を持つ。

防衛費を巡っては今後5年間の総額で40兆円超の確保が必要と指摘され、政府は将来的な増税などで償還財源を確保する「つなぎ国債」の発行を検討する。財源には湾岸戦争時にも増税した法人税などが取り沙汰されるが、経済界は既に強く反発しており、調整は難航が避けられない状況だ。

首相が9月に米ニューヨーク証券取引所で表明したNISAの恒久化や、非課税投資枠の上限引き上げも柱。看板政策「新しい資本主義」で掲げた資産所得倍増の実現に向け、現在は時限措置であるNISAの使い勝手を向上させ、個人金融資産を投資に振り向ける狙いがある。ただ、制度拡充による税収減少をどのようにまかなうかが課題だ。

自動車関連税制では、低燃費車の税負担を軽くする現在のエコカー減税が5年4月末に期限を迎える。電気自動車(EV)などのエコカー普及のため優遇を拡充する半面、ガソリン車の基準は厳しくなりそうだ。

このほか、4年度税制改正で議論を先送りした株式売却益など金融所得課税の強化や、二酸化炭素(CO2)排出量に応じて課税する炭素税の導入も焦点だ。

(野村憲正、中島康裕)

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