100歳時代プロジェクト

〝4~5人に1人〟の国民病 変形性膝関節症 体重増が思わぬリスクに

膝の関節の変形により、痛みだけでなく、進行すると完全に伸ばすことができなくなる「変形性膝関節症」。自覚症状のない潜在的な患者を含めると日本人の4~5人に1人と推計される〝国民病〟で、特に50代以上に多い。その予防や進行を抑えるには体重を増やさないことも重要だ。動作によっては体重増加分の10倍以上の負荷が膝にかかることも分かっており、専門家は「500グラムの体重増でも注意してほしい」と話している。(山本雅人)

負荷13倍のデータも

体重増が膝に与える影響について注意を促すのは、早稲田大スポーツ科学学術院の熊井司教授。整形外科医として五輪代表選手らの治療も数多く行ってきたほか、東京都内の病院で月2回、特殊外来「足のスポーツ整形外科外来」も担当している。

熊井司・早稲田大スポーツ科学学術院教授
熊井司・早稲田大スポーツ科学学術院教授

熊井教授によると、体重による膝への負荷に関する研究は国内外でいくつかあって、熊井教授が理事を務める学会ではこれらのデータを精査したうえで、①ウオーキングの場合は体重の2~4倍程度②階段昇降では4~7倍程度③ランニングやジャンプでは10倍以上-の負荷が膝にかかることを導き出し、国民への啓発を行っている。

このデータとは別に、熊井教授自身も令和元年、標準的な体重の中高年の女性に3キロの重りをつけ、平地での歩行と、階段(高さ約30センチの台)から降りるという2つの動作を行ってもらい、重りがない状態で行ったのと比べ、体重が増加するとどのくらい負荷が増えるのかを調べた。簡易的に調べるため、床に敷いたマット状の機器により、足裏にかかる負荷を測定した。

その結果、歩行では重りのないときに比べ約9キロ(重りの約3倍)、階段から降りた場合は約40キロ(重りの約13倍)という大幅な負荷のアップに。「膝ではなく足裏という違いはあるものの、わずかな体重増が大きな影響を与えることを裏付けた」と語る。一歩一歩、その負荷の増加が膝に伝わり、軟骨をすり減らすなどの悪影響を与えるという。

減量は筋トレ併用

変形性膝関節症は膝でクッションの役割を担う軟骨や半月板が摩耗したり、加齢などで弾力が失われたりすることから始まり、進行すると関節が変形する。典型的な症状は膝の痛みや水がたまることで、進行すると曲げ伸ばしに制限が出てくる。

有効な予防・治療法として減量があるが、特にシニアの場合、減量によって筋肉も減らしてしまうと、人生100歳時代のなか、将来の寝たきりリスクにもなりかねない。熊井教授は「必ず筋トレなどの運動を並行して行うとともに、タンパク質をきちんと摂取すること」をアドバイスする。

具体的には、スクワットのような太ももなど大きな筋肉にゆっくり負荷をかける運動がおすすめ。さらに「骨だけでなく筋肉も一体となって足を支えてくれるので膝の保護にもなる。逆に筋肉がないとすべての負荷が骨にかかる」とも。

運動というと、手軽なものとしてジョギングなどを思い浮かべる人も多いが、前述のように、走る動作は体重の10倍以上の負荷が膝にかかる。「スローペースでジョギングをするなら、同じペースの早歩きを行った方がはるかによい」と強調する。

初期の変形性膝関節症には靴のインソールを作り直すことによる症状軽減などさまざまな選択肢もある。熊井教授は「膝に少しでも違和感のある人は迷わず専門医を受診してほしい」と話している。

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