「市民社会」こそ平和の礎 ノーベル平和賞、プーチン氏に痛烈な非難

7日、ノーベル平和賞の受賞が決まり、笑顔でポーズをとるウクライナの人権団体「市民自由センター」のスタッフら=キーウ(共同)
7日、ノーベル平和賞の受賞が決まり、笑顔でポーズをとるウクライナの人権団体「市民自由センター」のスタッフら=キーウ(共同)

ウクライナ侵略戦争を続けるプーチン・ロシア大統領への、最大級の非難にほかならない。今年のノーベル平和賞がロシアとベラルーシ、ウクライナで人権擁護活動に取り組む1個人・2団体に贈られる。ノーベル賞委員会は授賞理由で、人権を尊重する「市民社会」こそが平和の礎だと指摘した。独裁体制による弾圧と侵略戦争は通底していることを看破した。

ウクライナの受賞団体「市民自由センター」(CCL)のマトビチュク代表と、4月末にキーウ(キエフ)で会った。郊外のブチャなどで露軍の残虐行為が次々と発覚し、CCLは目撃者や被害者からの聞き取り調査に奔走していた。

「民間人虐殺、拷問、強姦…報告されている規模からみて、ロシアが組織的に戦争犯罪を働いていることは疑いない。人々に恐怖を与えて支配するためだ」。マトビチュクさんはこう話し、プーチン氏や戦争犯罪者の訴追を「必ずやらねばならない」と力を込めた。

ロシアの「メモリアル」は歴史保存に取り組む老舗の人権団体だ。ソ連末期のペレストロイカ(再建)期に発足し、スターリン時代の弾圧に関する調査や記録を主な活動としてきた。「ロシアの良心」とも呼ばれてきた団体だ。昨年12月末、「歴史を歪曲(わいきょく)している」との理由で裁判所から解散を命じられた。

プーチン氏は、ソ連を超大国に押し上げた指導者として独裁者スターリンを評価する。メモリアルの解散は、弾圧史を記録し、犠牲者を追悼するといった活動すらもプーチン氏には容認できなくなったことを示していた。「帝国再興」を夢想するプーチン氏は2月、ウクライナ侵略に乗り出した。

ビャリャツキ氏が受賞者となったベラルーシでも、ルカシェンコ大統領の独裁が長く続き、弾圧が苛烈をきわめる。ルカシェンコ氏はプーチン氏を後ろ盾に体制を維持しており、ウクライナ侵攻では自国を露軍の出撃拠点として使わせた。

「市民社会が独裁に屈するとき、しばしば平和が次の犠牲となる」。ノーベル賞委員会はこう指摘している。(遠藤良介)

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