朝晴れエッセー

プラチナ婚式・10月7日

今から5年前に私は母と大げんかした。2人で言い争い、最後には親子の縁を切るという話までになった。それから私は一切、実家には行かなかった。

7月の終わりに叔母から電話があり母が認知症だと連絡をもらった。次の日の仕事帰りに久しぶりに実家に顔を出すと、98歳の父は満面の笑みで迎えてくれたが、88歳の母は私のことがわからないようだった。ショックだったが、母はまるで子供のように無邪気に笑っていた。

それから私は兄と交代で頻繁に実家に娘も連れて行くようになった。実は長女は私には内緒でずっと実家に両親の様子を見に行っていたらしい。徐々に母の様子が変わっていくのを知ってはいたが、私に気を使って黙っていたらしい。私自身、母の様子を見てどれだけ後悔したか。後悔先に立たずというが、もう取り返しはできない。父も母の面倒をみるのに疲れていて、まさに老々介護だ。

夫婦2人で入居できる施設を探したり、実家の片づけの段取りをしたりしながら両親は無事に施設に入居することができた。施設に入居する前に私は両親が今年は結婚70年目だと気付いた。プラチナ婚式。お祝いに2人の好きなおすしを買って実家に行き、「お父さんとお母さんは結婚70年目だよ。プラチナ婚式だよ」と言うと、父は「そんなになるんかー」と笑い、母も横でニコニコしていた。

施設に入ってからも父は頻繁に連絡をくれる。母も元気にしているようだ。今はコロナで面会できないが、コロナが収束したら一緒におすしを食べに行きたいと思う。


瀬川淑恵(59) 堺市南区

会員限定記事会員サービス詳細