美村里江のミゴコロ

不穏な「吸血かさぶた」

美村里江さん
美村里江さん

趣味の渓流釣りへ出掛けるとき、私にはもういくつかの楽しみがある。石を拾うこと、自然の中での読書と軽食、そして昼寝である。

特に昼寝は、5分だけでも大変なリフレッシュ効果があり、頭だけでなく心の隅々までスッキリする。眠くなくても時間を取るほど、独立した趣味となっている。

これを話すと大抵「痛くないの?」「汚いんじゃない?」などのご心配をいただくし、その通りの部分もある。特に上流で雨が降ったことによる水位の急上昇や雷、クマ出没の心配もあるので、危険のないよう見守る相方(私の場合は夫)が必須だ。

それでもやめられない。どこの釣り場にもお気に入りの場所を持っている。ふかふかにコケを蓄えた岩や、カーブが私の体にぴたりとフィットするくぼみなど。防寒も兼ねた厚着のウエアでごろりと横たわると、風に頰をなでられ、木漏れ日に揺られ、水音が意識を遠くへ流していく。ものの数分で必ず寝落ちしてしまう、極上の心地である。

そんな趣味の時間も挟みつつ、ある程度の釣果で魚も休憩時間に入った。では別の釣り場へ移動しようと車に乗り込み、1時間ほど朝食がてらのドライブである。

「たこ焼きがおいしかったの、どこのコンビニだっけ」「ほら、あのサイモン・ペッグに似た店長さんとこの」

そんな話をしつつ耳をチェックする。以前お気に入りのイヤリングを片方なくしたので、無事を確かめホッと一安心。が…1つ多い?

右耳のイヤリングの少し上にあるそれを、最初は「瘡蓋(かさぶた)」だと思った。昼寝中に虫刺され部分を搔いてできたのだろうと。ところが、さらによく触ると点ではなく面で、小指の爪の半分くらいある。爪先でカリカリひっかいてみたが取れない。瘡蓋ではなさそうだ。

先の1週間に撮影がないことを再確認。仕事に影響なしと判断し、好奇心のままに人さし指と親指で摘んで力任せに引っ張った。取れた、と同時に、正体を見て「っっ」と声にならぬ感嘆語が出た。

マダニ! 危ない!

運良く吸血前で歯も残らなかったが、マダニが原因(ライム病)で数カ月休養した著名人も多数いるのだ。虫好きながら久々にゾッとした。その後、耳にも虫よけスプレーを吹き掛け寝転びはするが、無防備な昼寝はもうできない。

会員限定記事会員サービス詳細