トキワ荘が結ぶ縁 東京・豊島と漫画家の故郷、広がる交流

石ノ森章太郎
石ノ森章太郎

漫画の巨匠たちが青春時代を過ごしたアパート「トキワ荘」があった東京都豊島区で、漫画家たちの故郷との交流を育む取り組みが進んでいる。石ノ森章太郎が生まれ育った宮城県登米市の米粉を使ったカレーパンやサブレを商店街などが開発し、トキワ荘を復元した「区立トキワ荘マンガミュージアム」の近くで販売。空き家を活用した販売店舗も年度内に開く予定で、関係者は他の漫画家住人の故郷とも交流を広げたい考えだ。

登米粉でモチモチ

ミュージアムの近くで漫画などの書籍やカフェ空間を提供する「ふるいちトキワ荘通り店」。今年5月から毎週火曜日に登米産の米粉を使った「トキワ荘カレーパン」(250円)を販売し、9月末からは「トキワ荘サブレ」(150円)が加わった。店長の矢崎由絵さんは「地元の方が予約してくれたり、ミュージアム帰りの人が立ち寄って買ってくれたりしている。カレーパンも登米粉でモチモチしていて、評判がいい」と手応えを笑顔で話す。

登米市には「石ノ森章太郎ふるさと記念館」があり、サブレは同記念館前の蔵でも10月から販売。同市は化学肥料などを大幅に減らした「環境保全米」の産地としても知られ、豊島区役所内のカフェでは同市の食材を使ったフェアが定期的に開かれている。

トキワ荘を再現したトキワ荘マンガミュージアム=東京都豊島区南長崎
トキワ荘を再現したトキワ荘マンガミュージアム=東京都豊島区南長崎

カレーパン試食会

高野之夫区長と熊谷盛広市長はカレーパンの試食会などでオンライン交流し、今年5月には高野氏が熊谷氏を表敬訪問した。市まちづくり推進部の千葉昌彦次長は「トキワ荘の縁を生かした都市間交流を、今後も続けていきたい」と話す。

宮城県登米市の米粉を使ったトキワ荘サブレ(手前)と、トキワ荘カレーパン=ふるいちトキワ荘通り店
宮城県登米市の米粉を使ったトキワ荘サブレ(手前)と、トキワ荘カレーパン=ふるいちトキワ荘通り店

ミュージアム近くの区立椎名町小学校では、年度内に開く店舗で販売される登米粉を使ったお菓子に、児童らのアイデアを生かす取り組みをまちづくりへの協力として行う予定だ。店舗の2階は区が元住人の漫画家ファンの交流の場などに活用する方針で、6月補正予算で整備運営費として850万円を計上している。

トキワ荘商店街の小出幹雄会長は「登米市だけでなく、トキワ荘の先生たちのいろんな故郷と交流しながら、どんどん街を活性化させていきたい」と意欲を示している。

トキワ荘に住んだ主な漫画家
トキワ荘に住んだ主な漫画家

「テラさん」の新潟・新発田市とも

トキワ荘には石ノ森章太郎のほかに、漫画の神様と呼ばれた手塚治虫、住人のリーダー格だった寺田ヒロオ、藤子不二雄のペンネームで「ドラえもん」などを生み出した藤子・F・不二雄と藤子不二雄(A) 、「天才バカボン」の赤塚不二夫(いずれも故人)と、少女漫画で新境地を拓いた水野英子さんらが、昭和28~36年に住んでいた。

このうち、「テラさん」の愛称で住人から慕われた寺田は、トキワ荘マンガミュージアムでも令和2年10月~翌年3月に特別展「トキワ荘のアニキ 寺田ヒロオ展」が開催。今年9月には、寺田が少年時代から就職までを過ごした新潟県新発田市で記念切手が発行され、この切手は同ミュージアムでも販売されている。

同市職員で寺田ヒロオ研究会会長の竹内和宏さん(60)は「トキワ荘マンガミュージアムで寺田ヒロオの切手が販売されるのは、とてもうれしい」と話す。また、「機会があれば、ミュージアムの特別展のように寺田ヒロオのオリジナルグッズを新発田でも販売したい。妹さんが持っていたトキワ荘住人のサイン色紙などを、ミュージアムにお貸しすることも可能だ」と交流に前向きな姿勢を示す。

豊島区幹部は他の漫画家の故郷との交流について「区長にも強い思いがあり、広げていきたいと考えている」と話している。(鵜野光博)


会員限定記事会員サービス詳細