完成予定から20年遅れ 「阪急淡路駅」高架事業の複雑怪奇

阪急淡路駅周辺で進む阪急京都線・千里線連続立体交差事業=9月、大阪市東淀川区 (北野裕子撮影)
阪急淡路駅周辺で進む阪急京都線・千里線連続立体交差事業=9月、大阪市東淀川区 (北野裕子撮影)

いつになったら完成するのか-。阪急京都線と千里線が乗り入れる淡路駅(大阪市東淀川区)付近で、鉄道を高架化する立体交差事業が著しく遅れている。交通の円滑化を図るため平成9年から大阪市や阪急電鉄が事業に乗り出したが、大がかりな工事ゆえに、当初の完成見込みは20年近く後ろ倒しに。専門家は「建設技術は年々向上しており、あらゆる工法を模索すべきだ」と指摘している。

結局完成は令和13年度?

京都線千里線が交差する淡路駅周辺は電車の往来が激しい。2路線の踏切が連続する地点もあり、車がスムーズに流れず、交通渋滞の解消は積年の課題だった。

そうした中、市は高架化と周辺の区画整理を同時に進める計画を策定。駅周辺の7・1キロを高架化し、17カ所の踏切をなくす。事業を開始した9年時点で15年後の完成を想定していた。

ただ肝心の用地取得が難航。15年度に8年、27年度に7年の遅れが生じた。今年春には、さらに4年の遅れが判明し、現時点では令和13年度の完成を予定している。費用は阪急が8・5%を負担し、残りを国と市がほぼ折半するが、1632億円と見込んでいた事業費は694億円増の2326億円にまで膨れ上がった。

「いくらなんでも時間がかかりすぎている」。淡路駅付近の不動産店社長、石原幸二さん(56)が現状を嘆く。駅近くに住む60代の主婦も「駅自体が古く、新しく建て替えられると期待していたのに全くめどが立たない」とこぼす。

事業の遅れにつながった用地取得。市によると、地権者一人一人と立ち退きや引っ越し先について話し合う必要があるが、折り合いに時間を要した。用地の地質調査に波及する中で土壌汚染も明らかに。新たな対策が求められ、遅れに拍車がかかったというわけだ。

他の事業も遅れ相次ぐ

一部高架化に伴い、線路はJR東海道新幹線の線路よりも上部に通す。新幹線の線路をまたぐ形での鉄道は全国でも珍しく、ただでさえ高度な技術が求められるが、平成28年には、神戸市北区の新名神高速道路の建設現場で橋桁が落下。これを受け、安全対策工事の強化も新たに必要になった。

市による大型インフラ事業を巡っては、完成までの延期や事業費増が相次ぐ。2025年大阪・関西万博のアクセスルートに位置付けられる高速道路「淀川左岸線」の2期区間は今年、令和9年春の完成予定から最大8年遅れる見通しであることが明らかになった。

区間内の一部で地盤の異常が判明し、工法を見直すためで費用は1千億円増。工事現場で土壌汚染が見つかり、令和2年にも700億円の対策費が追加されたばかりだった。

「大がかりゆえにやむを得ないが…」

なぜこうも事業の遅れが目立つのか。

立命館大総合科学技術研究機構の村橋正武上席研究員は見通しの甘さは否めないとしつつ「大がかりな事業ゆえに着工して初めて実態を把握するというケースが多い。計画時に想定できる工法で工事に臨むため費用や期間の変動はやむを得ない場合もある」と指摘する。

例えば、土壌汚染。着工前に実態をつかむのは難しいとされるが、自治体としては事前調査の費用を議会側に説明しても「汚染規模は実際に着手しないと実態が分からず、事業本体の費用に組み込みにくい」として予算計上が見送られるケースがみられるという。

その上で村橋氏は、費用は人工知能(AI)などの導入で圧縮できる余地があると指摘。建設工事で最も費用がかかるのは人件費とされ、村橋氏は「行政は民間に比べて新たな技術の導入などに対して比較的腰が重い。当初の計画・設計段階からさまざまな選択肢を検討していくべきだ」としている。(北野裕子)

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