女装は古代から? 「異性装の日本史」をたどる

法橋関月《巴御前出陣図》江戸時代(18世紀) 東京国立博物館【後期展示】 Image TNM Image Archives
法橋関月《巴御前出陣図》江戸時代(18世紀) 東京国立博物館【後期展示】 Image TNM Image Archives

多様な性のあり方を社会全体で理解し、認め合う動きが出てきた今、日本における「異性装」の歴史をたどるユニークな展覧会が注目を集めている。渋谷区立松濤美術館(東京)の「装いの力-異性装の日本史」だ。

衣服や化粧などによって生物学的な性を越える試みは、性的指向に限らずさまざまな理由で古来、行われてきた。本展は歴史書や絵画から近現代の新聞雑誌、漫画、映像まで、男装・女装がどのように表現されてきたのかを、社会との関わりも含めて考察している。

異性装にまつわる言及は『古事記』までさかのぼり、小碓命(をうすのみこと)(後の倭建命(やまとたけるのみこと))が女装をして九州の熊曽(くまそ)の宴に潜入、討伐したことが記されている。また『とりかへばや物語』『新蔵人物語』といった平安~室町時代の物語にも男装・女装をした主人公が登場。さらに『平家物語』でおなじみの巴御前(ともえごぜん)を筆頭に女武者も人気を集め、近世の錦絵などにたびたび描かれてきた。

森村泰昌「光るセルフポートレイト(女優)/白いマリリン」1996年 作家蔵(豊田市美術館寄託)
森村泰昌「光るセルフポートレイト(女優)/白いマリリン」1996年 作家蔵(豊田市美術館寄託)

男性の女装、女性の男装と「性を重ねることで通常とは異なる力(異能)が生じるという考え方があったように思われる」と、性社会文化史研究者の三橋順子氏は図録で指摘している。加えて、宗教上の禁忌が強い西洋社会とは違い、日本人は異性装の芸術、芸能に寛容であるばかりか大いに魅せられてきた。歌舞伎や大衆演劇の女形、宝塚歌劇の男役スターなど、例を挙げればキリがない。

明治に入り西洋文化が流入すると、異性装は一時的にだが禁じられ、社会的に異端視する風潮が強まっていった。「リボンの騎士」「ベルサイユのばら」といった人気漫画や芸能の世界では喜んで受容しても、実社会での偏見はいまなお残る。

現代美術家、森村泰昌の「女優シリーズ」やダムタイプの記録映像、そしてシモーヌ深雪らドラァグクイーンによる華麗でパワフルな装いの展示で本展は締められる。性のありようは、その時々の社会次第で変わり得るのだと改めて気づかされる。

一部展示替えあり。30日まで。月曜休(10日は開館し翌11日休)。土・日曜、祝日と最終週(25~30日)は日時指定予約制で、公式HPからの予約が必要。(黒沢綾子)

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