社説検証

安倍元首相の国葬実施 朝毎東「社会分断」と批判 「政府は正しさ説け」産経

安倍晋三元首相の国葬で弔辞を述べた菅義偉前首相=9月27日、東京都千代田区(松本健吾撮影)
安倍晋三元首相の国葬で弔辞を述べた菅義偉前首相=9月27日、東京都千代田区(松本健吾撮影)

参院選の遊説中に凶弾に倒れた安倍晋三元首相の国葬が9月27日、厳粛に営まれた。吉田茂元首相以来55年ぶり、首相経験者としては戦後2例目となる国葬には内外から4200人が参列した。世論調査では政府の説明不足などから反対意見も一定数を占めたものの、全国各地に設けられた一般向けの献花場には多くの人々が足を運び、一般で募られたデジタル献花も50万人を突破した。反対派は当日も集会やデモで政治的なアピールを行ったが、この日の儀式で最も説得力を持ったのは、心を込めて故人を送る礼節ではなかっただろうか。

産経は国葬当日の27日付で「礼節ある日本の姿を示したい」と題し、「国際的、歴史的視野に立てば国葬で送ることこそ、最もふさわしい」と説いた。さらにジョージアの駐日大使がツイッターで発信した「故人に対する目に余る言動に心を締め付けられております」「今は政治ではなく日本全体の姿が試される局面です」との言葉を引用、海外の外交当局者の目に映った反対派への違和感を紹介した。

読売は28日付で「様々な追悼形式がある中、岸田首相が、国外からの弔意に礼節をもって応えようと安倍氏の葬儀を国葬としたことは理解できる」とした。さらに野党が国葬は「内心の自由を侵す。憲法違反だ」と批判したことに対しては「国葬への賛否も、弔意の表明も自由に行われたではないか。誰の内心の自由が侵されたと言うのか」と強く反論した。

日経は国葬そのものの是非には踏み込まず、「広く国民の理解を得る形で実施できなかった要因は、岸田文雄政権の対応のまずさによるところが大きい」との見方を示し、「国会で説明を尽くし、多くの党から理解を得るのが望ましかったはずだ」と政権の対応が不十分だったとした。

朝日は国葬を「最後まで賛否両論が渦巻く中で挙行した」と位置づけ、「社会の分断を深め、この国の民主主義に禍根を残したというほかない」と主張。そのうえで「異例の『国葬』を決断した岸田首相の責任は、厳しく問われ続けねばならない」と批判した。

毎日も「岸田首相は当初『国全体で弔意を示す』と説明したが、幅広い国民の合意は得られず、かえって分断を招いた」と断じた。さらに閣議決定で実施が決められたことを「議会制民主主義のルールを軽視し、行政権を乱用したと言われても仕方がない」と指摘、「国葬を強行した手法は、首相が掲げる『聞く力』や『丁寧な説明』とは程遠い」と突き放した。

東京も「世論が二分される中で行われた国葬は、国民を分断することで、賛否の分かれる政策を進めてきた安倍政治の象徴でもあろう」と指摘した。

朝日、毎日、東京各紙は、森友・加計学園や「桜を見る会」の問題、安倍氏ら自民党議員と旧統一教会の関係などが未解明とし、「(安倍氏への)歴史的な評価が定まっていない」ことを国葬反対の理由のひとつとした。

しかし、「評価」について読売は「どんな歴史的人物でも評価に異論を唱える人がいる。時間をかければ定まるものでもない」と一蹴した。

「かたりあひて 尽(つく)しゝ人は 先立ちぬ 今より後の世をいかにせむ」

産経は30日付で菅義偉前首相が弔辞で、暗殺された伊藤博文を偲(しの)んだ山県有朋の歌を「私自身の思い」として2度読み上げて感動を呼んだことを取り上げた。

「言葉の力が、故人を見事に送ったのである」と評し、「政府与党は堂々と国葬の正しさを説いてもらいたい」と締めくくった。(長戸雅子)

■安倍元首相の国葬実施をめぐる主な社説

【産経】

・礼節ある日本の姿を示したい (9月27日付、論説委員長名)

・真心込めて故人を送れた (9月30日付)

【朝日】

・分断深めた首相の独断 (9月28日付)

【毎日】

・合意なき追悼の重い教訓 (9月28日付)

【読売】

・功績たたえ多くの人が悼んだ

/外交遺産を戦略的に活用したい (9月28日付)

【日経】

・国葬への批判踏まえ丁寧な政権運営を (9月28日付)

【東京】

・「安倍政治」検証は続く (9月28日付)

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