にほんの村

生きる力与えてくれた 新潟県粟島浦村

乗馬を終え、馬の体を洗うのも活動の一つ。声を掛けながら丁寧に拭き上げる
乗馬を終え、馬の体を洗うのも活動の一つ。声を掛けながら丁寧に拭き上げる

新潟県粟島浦村。地図上で見ると日本海に浮かぶ周囲約23キロの島。ほとんどは山地で、主要産業は漁業と観光。寒・暖流が入り交じる豊かな海域に位置し、型の良いタイがあがる。観光は釣りと海辺で行うキャンプが支えている。人口は約350人。小さな島でも、少子高齢化は容赦なく進む。島唯一の粟島浦小中学校の児童・生徒数は全員でたった31人だ。

子供たちの歓声を取り戻したい―。村はこんな願いを込めて平成25年から「しおかぜ留学」と名付けた離島留学制度をスタートさせた。全国から来る小5~中3の児童・生徒20人が原則1年間、寮や里親宅で暮らし、学校に通う。

特徴は、学校のほかに毎日、村営の「あわしま牧場」に通い、そこにいる8頭の馬と触れ合い、世話をするプログラムが盛り込まれたことだ。大きくて、おとなしく愛らしい生き物との暮らしは、子供たちをひきつけ、期間延長を申請するケースが相次ぐという。

青い空と広がる海。のびのびとした環境で乗馬の練習を行う「しおかぜ留学」の子供たち=新潟県粟島浦村
青い空と広がる海。のびのびとした環境で乗馬の練習を行う「しおかぜ留学」の子供たち=新潟県粟島浦村
近所のおばあさんと朝の挨拶を交わす留学生たち
近所のおばあさんと朝の挨拶を交わす留学生たち
友達の話、先生の話。夕げの食卓に子供たちの笑顔がはじけた
友達の話、先生の話。夕げの食卓に子供たちの笑顔がはじけた
夕食後、寮の自室で勉強する子供たち
夕食後、寮の自室で勉強する子供たち

午前6時。自転車に乗った留学中の子供たちが牧場に来た。馬の世話は子供たちの大事な仕事。厩舎(きゅうしゃ)の掃除や餌やりなど朝から、やることは多い。ひと汗かいた後は、地元の子供とおしゃべりしながら学校へ。途中、近所のお年寄りが「おはよう。今日も暑いよ」と声をかけた。「おはようございます」。大きな声が返ってきた。

放課後は再び牧場へ。馬術競技出場のため乗馬訓練を行う。練習の後は馬の体を洗い、蹄(ひづめ)の手入れもする。ブラシをかけられると、馬も目を細めたり、笑ったりする。東京から来ている菊池芙優(ふう)さん(11)は「(留学して)いろんなことがあったけど乗り越えられた。学校って、こんなにいいところなんだって今は思う」と話した。

障害を飛び越える表情は真剣そのもの
障害を飛び越える表情は真剣そのもの
午前6時。朝日と潮風を浴びながら馬の世話に向かう
午前6時。朝日と潮風を浴びながら馬の世話に向かう
村でひとつだけの信号を渡り登校する子供たち
村でひとつだけの信号を渡り登校する子供たち
食後の食器洗いは自分たちで。寮では自立した生活が求められる
食後の食器洗いは自分たちで。寮では自立した生活が求められる

青い空と豊かな海、連なる緑。この自然と島の人々、そして馬たちが隣にいる暮らし。その要素が子供たちに、思いがけないほどの生きる力を与えている。じっくり取材すると、この「まなび」の形が、子供たちへだけでなく島に活気を与え、未来を切り開いているようにみえた。

(写真報道局 恵守乾)

〈面積〉9・78平方㎞

〈人口〉335人(令和4年9月1日現在)

粟粒のように小さいことから「粟島」と名付けられたという説も。杉の器に焼魚とネギ、味噌を入れてお湯を注ぎ、そこに焼いた石を落とす「わっぱ煮」が名物料理。

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