「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

新たな岡田流か、守護神問題をどう解決する?

解説のため球場入りする岡田彰布氏=神宮球場(撮影・宮沢宗士郎)
解説のため球場入りする岡田彰布氏=神宮球場(撮影・宮沢宗士郎)

新たな岡田流なのか、新外国人投手補強なのか…守護神問題を解決することが来季V奪回への最大の課題です。矢野阪神は今季143試合を戦い、68勝71敗4分けの3位。クライマックス・シリーズのファーストステージ進出を決めましたが、レギュラーシーズン最後の試合(2日のヤクルト戦=甲子園球場)でも九回表に抑えのカイル・ケラー投手(29)が打たれ、勝利を逃しました。同日パ・リーグ2連覇を果たしたオリックスとの投打成績はほぼ同じなのに優勝と借金を抱えた3位という落差…はどこに? 結局、守護神不在に尽きますね。「マストで優勝」を期待される来季に向けて、解消しなければならない重要課題です。

滑り込みでCS出場

矢野阪神としてレギュラーシーズン最後の試合は延長十二回、3-3の引き分けでした。本拠地・甲子園球場は4万2539人の観衆で埋め尽くされ、最後になるかもしれない甲子園球場での矢野燿大監督(53)の姿をそれぞれのファンが脳裏に刻んだと思います。 「もう一度、甲子園球場に帰ってくるときは、日本シリーズになります。この大好きな選手たちと、そして満員の甲子園でこの日本シリーズをやれることを思い描き、横浜スタジアム、神宮と僕たちの野球にまた挑戦していきます」

試合終了後、今季限りで退任する指揮官は声を張り上げました。

3位に滑り込んで、8日から敵地の横浜でDeNAとクライマックス・シリーズのファーストステージを戦います。勝ち抜けば12日から神宮でリーグ優勝を果たしたヤクルトとファイナルステージを戦います。そして、DeNA、ヤクルトを撃破すれば22日から日本シリーズ。果たしてそこまでたどり着けるのか…。最後の戦いの日々を見守りたいと思いますね。

グループ総帥の決断

一方で頭をよぎるのは岡田彰布新監督(64)で迎える来季への思いです。2008年に阪神監督を退任してから15年ぶりの復帰。このコラムでは球団内で平田勝男2軍監督の昇格案が膨れ上がっていることを2度も書きました。しかし、阪急阪神ホールディングスの角和夫代表取締役会長兼グループCEO(73)は球団案を最後の最後まで退け、岡田氏の監督復帰を藤原崇起オーナー(70=阪神電鉄会長)に厳命しました。22日には阪神球団が極秘裏に岡田氏と面談して、監督就任要請を行いました。この辺りの内部事情はまた触れるとして、ではグループの総帥がなぜ、そこまで岡田氏にこだわったのか…。さまざまな理由はあるでしょうが、端的に言えば「勝つための最善策」だったのでしょう。

平田でもなく、和田でもない…岡田監督でないと絶対に勝てない。強いチームにはなれない。先週に指摘した「チームの緩い空気を一掃する強いリーダー」は岡田監督の15年ぶりの復帰しかない-という総帥の決断だったのでしょう。

ならば、来季の目標値はおのずと高くなります。新監督に求められるのは「いきなりの優勝」であって、2位や3位で大健闘…ではないのです。そうした観点でもう一度、今季の矢野阪神の戦いぶりを振り返るとレギュラーシーズン最終戦のスコアブックに明暗が凝縮しています。

若手投手陣は順調に成長

まず明…ですが、1番に中野が定着し、3番近本、そして大山や佐藤輝が主力選手としてスタメンに出続けています。彼らは矢野阪神で出番を与えられ、数字的にはまだまだ物足りなさはありますが、新体制による技術的な指導などで成長する余地を大いに残していると思います。さらに投手陣でも先発した西純矢や最後の3イニングを投げた才木、45ホールドをマークして最優秀中継ぎ投手賞を獲得した湯浅ら若手投手がスクスクと育ってきました。

しかし、一方で九回表に登板した抑えのケラーがまた炎上。3点を奪われましたね。九回裏に2点を取り返して同点のまま引き分けましたが、またまた最後の最後で白星がスルリとこぼれ落ちました。思い起こせば今季は開幕戦(3月25日のヤクルト戦=京セラ)でもケラーが逃げ切りに失敗し、そこから悪夢の9連敗です。その後、抑えを担った岩崎は何とか踏ん張りましたが逃げ切りの不安定さはシーズンを通して解消されませんでした。

阪神がシーズン最終戦を戦った同日、パ・リーグでは同じ関西に本拠地を置くオリックスが奇跡の逆転優勝で2連覇を達成しましたね。ここで阪神とオリックスの143試合におけるチーム成績を比較してみると…。

チーム打率 阪神は2割4分3厘、オリックスは2割4分6厘

チーム本塁打数 阪神は84本、オリックスは89本

チーム得点 阪神は489、オリックスは490

チーム防御率 阪神は2・67、オリックスは2・84

チーム失点 阪神は428、オリックスは458

チーム盗塁数 阪神は110、オリックスは62

チーム失策数 阪神は86、オリックスは75

どうでしょう。チーム打率や本塁打数、チーム防御率や失点数はほとんど同じですね。それでいて阪神は68勝71敗4分け。オリックスは76勝65敗2分け。借金を抱えた3位とリーグ優勝の違いです。

リーグは違います。しかし、指名打者(DH)制のあるパ・リーグでチーム得点がリーグ5位、本塁打数がリーグワーストのオリックスがなぜ勝てたのか。それは少ないリードを先発-中継ぎ-抑えがしっかりと守り切り、堅固な守備で接戦を制してきた積み重ねでしょう。DH制でありながら、投手陣を中心とする守りの野球で隙を見せずに勝ち切ったのでしょう。

中継ぎや抑えで〝刃こぼれ〟

逆に阪神は先発陣は青柳や西勇輝、伊藤将司、ガンケル、西純矢、才木、藤浪らがそろっているのに中継ぎや抑えで〝刃こぼれ〟が多く、内外野の守備の乱れも矯正できずに接戦を勝てなかったから3位…。

では、来季にマストで優勝を期待される岡田新体制にとって喫緊の課題はなんでしょうか。もう、これは絶対的な守護神の構築ではないでしょうか。昨季はロベルト・スアレスが42セーブを記録する大活躍。チームは優勝こそ逃しましたが、リーグ最高の77勝を飾りました。来季は試合の最後の最後を締めくくる役を誰にするのでしょうか。

岡田新監督は第1次政権(2004~08年)では藤川球児、ジェフ・ウイリアムス、久保田のJFKを構築しました。2005年のリーグ優勝の原動力ですね。現状の手駒の中から新ストッパーを指名し、新たな岡田流を編み出すのか。それとも新外国人投手を獲得して新ストッパーに充てるのか…。ここが戦力的には最大のポイントになるはずです。

シーズンの開幕戦で打たれ、シーズン最終戦でまた打たれ…。4年目だった矢野監督の誤算は最初と最後であらわになりました。同じ轍(てつ)を踏まないように…。岡田新監督の手腕と球団編成部の頑張りに期待したいですね。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。


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