EVの要 自動車大手、電池投資を加速 安定供給・次世代開発で主導権

EVの生産ラインで電池を搭載する作業員。電池がEVの競争力を左右する=岡山県倉敷市の三菱自動車水島製作所(黄金崎元撮影)
EVの生産ラインで電池を搭載する作業員。電池がEVの競争力を左右する=岡山県倉敷市の三菱自動車水島製作所(黄金崎元撮影)

国内の自動車大手が、電気自動車(EV)など電動車の基幹部品である車載電池への投資を加速している。電池メーカーからの調達だけでなく、自らも大規模投資に動くことで安定的に電池を確保する狙いがある。現在主流のリチウムイオン電池は中韓勢が世界市場をリードするが、本格的なEVシフトに備え、国内大手は航続距離を大幅に延ばせる「全固体電池」の開発も急いでいる。

トヨタ自動車は電池生産に日米で最大7300億円を投資する。米ノースカロライナ州に、グループの豊田通商と約3250億円を投じ、工場を建設する。国内は計4カ所に約4000億円を投資。2024(令和6)~26年に生産を開始する。

ホンダも韓国電池大手のLGエナジーソリューションと約6100億円を投じて米国に工場を建設し、25年の量産開始を目指す。日産自動車はリチウムイオン電池を生産する「ビークルエナジージャパン」(茨城県ひたちなか市)の買収を決めた。スズキも約1500億円を投資してインドに工場を建設、26年の稼働を予定している。

各社が大型投資を行い、自ら電池生産に動いているのは、予想を上回るスピードで進むEVシフトがある。市場調査会社のテクノ・システム・リサーチの担当者は「EVの成長が速く、電池メーカーの設備投資を待てず、大型投資が増えている」と話す。自ら電池の基本技術を確立し、電池メーカーに生産を委託することでコスト競争力を高める狙いもある。

トヨタやホンダが米国に工場を建設するのは、バイデン米政権が8月に成立させた「インフレ抑制法」を意識した動きともみられている。同法はEV購入時に税控除するEV普及促進策を盛り込んでいるが、控除の対象は北米で生産された車両や電池部品とされ、国内大手は電池の現地化を迫られている。

電池メーカーとの協業も進んでいる。世界的に電池の獲得競争が激しくなっており、協業によって安定的に調達する狙いがある。ホンダは車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)と協業を深める覚書を締結。トヨタも電池の安定調達を目的にCATLや中国のBYDと協業している。

一方、国内大手は次世代の主力電池とされる全固体電池の開発を急いでいる。EVの競争力のカギを握るのは電池とされるが、全固体電池は現在主流のリチウムイオン電池に比べ、航続距離を延ばせるほか、小型化や充電時間の短縮が可能になる。

トヨタは20年代前半に全固体電池を搭載したハイブリッド車(HV)を発売する計画だ。ホンダは20年代後半、日産も28年度に全固体電池搭載のEVの発売を目指している。

米国のEV普及促進策では中国製の電池部品を排除する動きもあり、今後は地域を分けた調達が大きな課題となる。それぞれの地域でいかに必要な量を安定的に確保できるか。各社の電池戦略が電動車時代の競争力を左右する。(黄金崎元)

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