朝晴れエッセー

時の流れ・10月3日

先日実家へ行ってきました。前日の夜にいきなり電話して行きました。本当は娘たちとキャンプに行く予定だったのですが、雨予報のため急遽(きゅうきょ)とりやめ、その代わりとして行くことにしたのです。

母はここ数年かなり物忘れが目立ってきており、以前なら食べきれないほどの料理でもてなしてくれたものですが、今は行きがけに弁当を買って行きます。

父の墓参りを済ませ、実家に着くと、明るいいつもの母が待っていました。気前よく冷えたビールを何本も出してくるその姿に、思わずニヤリとさせられます。ところがです。私は寝不足のせいか酔っ払って眠ってしまったのでした。目が覚めると外はもう夜。母と話すせっかくの機会を台無しにしてしまったのです。

帰り際、手を振って見送る母の姿が見えなくなると、娘たちがせきを切ったように話し出しました。やや興奮した口調です。母とためになる話をいっぱいしたというのです。どうやら私が寝ていた何時間もの間、昔の暮らしについてずっと話し込んでいたらしいのです。

そんな娘たちの様子に私は自分がいつもしゃべり過ぎていたのだと気付きました。するとまた娘たちが言いました。「お父さんって、酔っ払うと分かりやすいね。よく笑うし、声も大きくなる」。そうして今度は顔を見合わせて笑うのでした。そういえば昨年妻が亡くなるまでは、歯止めがかかって酔っ払うことなどありませんでした。

駅までの夜道を歩きながら、私の酔っ払った頭は、現在と過去とを行ったり来たりするのでした。


今野昇平(54) 東京都江戸川区

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