56号放ったヤクルト村上の「バット」の秘密 記録更新支えるミズノの凄腕職人

ヤクルトの村上宗隆選手のバット制作を担当しているミズノテクニクスの名和民夫さん(ミズノ提供)
ヤクルトの村上宗隆選手のバット制作を担当しているミズノテクニクスの名和民夫さん(ミズノ提供)

3日のDeNA戦(神宮)で日本選手最多となる56本塁打を放ち、史上最年少での三冠王を獲得したヤクルトの村上宗隆内野手(22)は、スポーツ用品メーカー大手・ミズノのバットを入団以来使用している。その村上のバット制作を担当しているのが、ミズノの関連会社「ミズノテクニクス」の名和民夫さん(55)。過去にはイチロー(マリナーズ)などを担当した〝凄腕の職人〟として知られる存在だ。名和さんは「イチローさんと同じように、村上選手も道具を大切にしている」と目を細める。

本塁打量産の陰に「微調整」

七回に迎えた第4打席。快音を残した村上の打球は、本拠地の大歓声に包まれながら右翼席上段に突き刺さった。最終戦で日本選手最多の56号本塁打を放った22歳が手にしていたバットは、イチローら名選手を担当した名和さんが手掛けた代物だった。名和さんは56号本塁打の達成に「村上選手がこれからももっと上を目指せるように、微力ながら私もこれからの作業に誠心誠意取り組ませていただきたいと思います」とコメントを寄せた。

村上が使用するバットは、材質が硬い「メープル」の素材を使用。長さは85センチで、重さは880~900グラムのものを複数用意し、シーズン中の体調や投手の特徴にあわせて使い分けている。長距離打者は通常、振りぬきやすさを重視して細めのグリップのバットを好むというが、村上が使用しているバットは太めのグリップで、どちらかといえばミートを重視する中距離打者タイプのバットだという。

名和さんによると、今年5月末に村上から「バット(の先端を)をくり抜いてほしい」と要望が寄せられた。

「ヘッド(先端)が軽くなるので、バットは振りやすく感じると思う。ヘッドが軽く感じることで手元までボールを引きつけることもできるので、(くり抜きは)有効的な手段だと思う」(名和さん)

村上は6月に14本塁打、8月には12本塁打をマーク。本塁打量産の陰には、バットの〝微調整〟があった。

【ヤクルトーDeNA】シーズン56号となる右本塁打を放つヤクルト・村上宗隆=神宮球場(撮影・斎藤浩一)
【ヤクルトーDeNA】シーズン56号となる右本塁打を放つヤクルト・村上宗隆=神宮球場(撮影・斎藤浩一)

イチローと共通する「道具」への思い

ヤクルトでプロ1年目を過ごした平成30年のシーズン終了後、村上は名和さんを訪問。そのときの印象が、名和さんは今も鮮明に残っているという。

「普通、高校から入団した選手は『どういう感じにしたらいいですか』と聞いてくる場合が多いが、村上選手からは『僕はこういう感じにしたいので、どのような形にすればいいですか』と言われた。そのため(バットを)イメージしやすかった」

かつてイチローのバットを担当した名和さんが村上にも共通して感じるのは、道具を大切にする真摯(しんし)な姿勢だという。名和さんは「イチローさんも試合が終われば、バットを磨いていたというのは聞いていた。村上選手も、ゲームが終わった後にはバットを磨いていると聞いている。自分が成績を残せているのは道具があればこそ、と思っていただいているのかなと感じる」と話す。

名和さんは「(村上は)探求心がものすごくあると思う。56本というのも通過点では」とさらなる飛躍に期待を寄せた。(浅野英介)

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