品川区長選で異例の「再選挙」 トップ不在の臨時体制 今後の流れは

区長選の開票速報を見守る候補者の支援者=2日午後、東京都品川区(中村雅和撮影)
区長選の開票速報を見守る候補者の支援者=2日午後、東京都品川区(中村雅和撮影)

2日に投開票された東京都品川区長選は、いずれの候補者も有効投票の総数の4分の1以上の法定得票数を得られず、公職選挙法の規定により再選挙が決まった。現在の浜野健区長が任期満了で退任した後は地方自治法に基づき、新区長が選ばれるまでの間、職務代理者が置かれる。トップ不在の臨時体制で、区政はどうなるのか。

「まだ何も決まっていませんので、確たることは申し上げられないんですよ」

投開票から一夜明けた3日午前、品川区の担当者は、せわしげな口調でこう語った。

慌ただしさには理由がある。昭和25年の公選法施行後、法定得票数に満たないことを理由に行われた首長選の再選挙は千葉県富津市長選(昭和54年)、奈良県広陵町長選(平成4年)、札幌市長選(15年)、宮城県加美町長選(19年)、鹿児島県西之表市長選(29年)、千葉県市川市長選(同)と全国で6件しかなく、極めて珍しい。2日の投開票結果の確定直後には区長選の候補者から「想定外だ」との声が漏れたが、それは区職員にとっても同じだ。

選挙事務所で開票状況を見守る支援者ら=2日午後、東京都品川区 (末崎慎太郎撮影)
選挙事務所で開票状況を見守る支援者ら=2日午後、東京都品川区 (末崎慎太郎撮影)

過去には開票作業などへの異議申し出があり、最高裁で確定するまで約1年半、再選挙が行えなかったケースもある。

区選挙管理委員会の担当者も「再選挙の日程はもちろん、開票会場の選定といった具体的なことは、(17日までの)異議申し出期間が終了するまで、何も決められない」と語る。

〝代打の代打〟

地方自治法では、何らかの理由で都道府県や市町村の首長が不在となった場合、副知事や副市町村長らが職務を代理できるとしている。品川区をはじめ特別地方公共団体にもこの規定は適用され、副区長以下が代理者となる。

今回のケースでは、浜野氏が7日に任期満了で退任すると、品川区長が不在となる。区によると代理順は1位が桑村正敏副区長、2位が和氣正典副区長で、以下は総務部長、企画部長と続く。これに基づけば、桑村氏が代理者に就く。

ただ、就任してまもなく〝代打の代打〟をコールする展開になりそうだ。10月末に桑村氏が任期満了を迎えるからだ。

職務代理者は議会の解散や副知事、副市町村長、副区長の選任を「行い得ない」(行政実例昭和30年9月2日)と解釈されている。

10月中の区長選再選挙の実施は日程面などから事実上不可能だ。このため、桑村氏は任期満了による退任で資格を失い、11月以降は和氣氏が新たに職務代理者を務めるとみられる。

一定の制約も

人事以外でも職務代理者の権限は一定の制約を受けそうだ。議会の招集などは可能だが、選挙を経たトップではないため、予算案の策定などでは抑制的にふるまうことが多い。

平成29年の市川市のケースでは、職務代理者となった佐藤尚美副市長=当時=が、市議会で「新たな施策などの提案、また実施中の施策の中止、いずれも控える」と答弁している。

品川区によると、例年、予算案の策定は10月からスタートし、年内に大枠を固め、年明けの1月半ばまでで確定させる。区長選の年でも、義務的経費が中心のいわゆる「骨格予算」ではなく、さまざまな施策を盛り込んだ「本格予算」を策定する。

ただ、この流れは今回、日程的にかなり厳しい。公職選挙法では、17日の異議申し出期間終了後、50日以内に再選挙を実施するよう定められている。ただ、実務的には11月中旬以降でなければ選挙の実施は難しいとみられ、新区長による予算策定の日程は、2カ月程度、後ろ倒しされることになる。

年明け早々の区議会に「本格予算」を提出するには、通常2カ月半ほどかけて練りあげる予算案を、極めて短期間で形にしなければばらない。このため当初予算案は「骨格予算」を提出し、その後の区議会で補正する流れも想定される。

区民生活への影響を最小限とするため、当面の間、難しい区政運営が強いられそうだ。(中村雅和)

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