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最北端の宗谷本線は秘境駅の宝庫

ヨド物置が待合室の糠南駅。冬にはクリスマスパーティーが開かれる=北海道幌延町
ヨド物置が待合室の糠南駅。冬にはクリスマスパーティーが開かれる=北海道幌延町

JR北海道の宗谷本線は旭川と稚内を259・4キロで結ぶ路線。かつては稚内で樺太への航路と接続するなど、重要な役割を担ってきたが、現在はJRが平成28年に公表した「単独では維持が困難」という13区間に名寄-稚内間が含まれた。この区間の令和3年度の収支状況は収入2億4300万円に対して費用は30億1800万円と厳しい。

時刻表の索引地図で宗谷本線を見てみよう。旭川から北上し、士別、名寄、美深(びふか)、音威子府(おといねっぷ)、幌延などを経て稚内にたどり着く。本線を名乗りながら支線はない。名寄で深名(しんめい)線、名寄本線、美深で美幸(びこう)線、音威子府で天北線、幌延で羽幌線と接続していたが、昭和の終わりから平成初期にかけて廃線となった。

支線が走っていたころの地図と見比べると寂しい。駅も昨春、一気に12駅が廃止され、地図の空きスペースはますます目立つ。

そんな状況の宗谷本線で近年、人気を集めているものがある。それは秘境駅。一日に数本しか列車が止まらないため鉄路で行くのは難しく、訪ねたところで周囲にはなにもない。その非日常性が人を引きつける。

日本最北端の無人駅として人気を集める抜海駅=北海道稚内市
日本最北端の無人駅として人気を集める抜海駅=北海道稚内市

稚内から2駅南にある抜海(ばっかい)駅は日本最北の無人駅。最北端の木造駅舎を持ち、全国から鉄道ファンが集まる。ただ、一日に上下7本しか止まらず、集落から離れた立地で一日平均の乗車人員は3人以下。令和3年度にJRから駅の管理を引き継ぎ、年間約100万円の維持費を負担している稚内市は今年度限りでの廃止の方針を示したが、地元の反対を受け、5年度も存続を決定。今後は駅の在り方について協議され、6年6月に迎える駅開業100周年をどのような形で迎えるか注目される。

幌延町内にある糠南(ぬかなん)駅は何もない原野にポツンとある。板張りの簡素なホームに併設されている待合室は大阪に本社を置く鉄鋼メーカー、淀川製鋼所製のヨド物置だ。一日に停車する列車は上下6本。JRの調査によると一日当たりの平均乗車人数はゼロ。ユニークなたたずまいと何もなさがファンに受けている。

待合室の内部には時刻表やビールケースのイスがある
待合室の内部には時刻表やビールケースのイスがある

糠南駅は12月になると「クリスマスパーティー」が開かれる。一昨年は新型コロナウイルスの影響でオンライン開催。昨年は2年ぶりに現地で開かれ、氷点下の寒さの中、約50人が集まった。パーティーを支援する同町のホームページによると、鉄道愛好家が平成27年に始め、口コミなどで話題となり、恒例イベントになったという。

同町には糠南駅のほか、車掌車が待合室の下沼(しもぬま)駅、木製ホームの南幌延駅、本格駅舎を構える雄信内(おのっぷない)駅といった秘境駅があり、まさに宝庫。負の遺産を観光資源にする取り組みを進めている。(鮫島敬三)

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