外交・安保取材の現場から

弔問外交、各国は日本支持 国内発信には課題

会談を前に握手するカンボジアのフン・セン首相と岸田文雄首相=9月28日、東京都港区の迎賓館(鴨川一也撮影)
会談を前に握手するカンボジアのフン・セン首相と岸田文雄首相=9月28日、東京都港区の迎賓館(鴨川一也撮影)

9月27日に行われた安倍晋三元首相の国葬(国葬儀)は実施の是非をめぐり国内で賛否が割れた一方、岸田文雄首相は安倍氏が培った外交的遺産を引き継いで発展させる意志を示し、各国から支持を得た。中国が影響力を強めるインド太平洋諸国を日米などの自由主義陣営に引き寄せる機会にもなった。ただ、こうした意義の国内向け発信には課題も残る。

「法の支配による国際秩序の維持・強化など、日本外交の基軸をぶれずに貫いていくことを強調した」

首相は29日、海外要人との会談を終え、こう振り返った。多くの会談で安倍氏が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」の重要性を訴え、安倍外交の継承者であることを示した。

外務省によると、国葬参列のため、217の国・地域・国際機関などから734人の要人が訪日した。26~29日にかけて、首相は38回、林芳正外相は24回の会談を実施。日本を舞台に各国・地域の首脳らが同時期に集結し、重層的な対話を行った。

中国を念頭に置いた外交も展開した。首相はスリランカのウィクラマシンハ大統領と会談。スリランカは中国が巨額のインフラ支援を通じて借金漬けにし、経済危機に陥っていることを念頭に、両首脳は「全ての債権国が参加する透明かつ公正な負担の下での債務再編の重要性」について一致した。

中国が軍事拠点化を狙うカンボジアのフンセン首相との会談では、安全保障分野や経済面での関係強化の促進に向け「日系企業による対カンボジア投資を促進していきたい」と強調。フンセン氏は「引き続き日本と連携していきたい」と応じた。

一方、国葬に参列した首脳のうち、パプアニューギニア、キューバ、ルーマニアは首脳による初の来日となった。いずれも安倍氏が日本の首相として初めて訪問した国々だ。安倍氏が展開した「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」の成果ともいえ、2国間関係の発展を後押しした格好だ。

弔問外交の成果は一朝一夕に現れるものではない。ただ、各国の日本外交への支持は、日本が目指す国連の機能強化や北朝鮮による核・ミサイル開発や拉致問題などの外交課題を前進させる素地となり得る。

しかし、こうした弔問外交の意義が国民に十分に伝わったかは不透明だ。

9月30日の自民党会合では、現職の先進7カ国(G7)首脳が全員欠席したことを強調したり、英国のエリザベス女王の国葬と比較したりする国内報道が目立ったことに不満が噴出した。政府が「現職でなく元首相の国葬だったにもかかわらず大勢の要人が訪日した」「安倍氏と親交のあったG7の元首脳が参列した」といった事実を発信すべきだったとの声が上がった。

11月には東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議など複数の外交日程を控え、来年1月から日本が国連安全保障理事会の非常任理事国となる。弔問外交で培った各国との関係をさらに発展させることができるか。首相の外交手腕が問われる。(岡田美月)

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