異論暴論

正論11月号好評販売中 やるべきことは山積みだ

日本に残された時間はない

覇権国家・中国の来襲に備えて、台湾では富豪の出資で30万人の民間人狙撃手養成計画が進められていると本紙の矢板明夫台北支局長が報告している。それに比べて、日本の備えは大丈夫だろうか。

島田和久前防衛事務次官は岩田清文元陸上幕僚長との対談で、総理秘書官として補佐した安倍晋三元首相について「自衛隊の最高指揮官」としての責任の重さを片時も忘れていなかったと振り返る。中国の台頭を早い段階から警戒していた元首相にとって、憲法改正と防衛力抜本的強化の実現を見届けられなかったのは心残りだったろう、と両氏は語る。

日本政府は防衛費の大幅増額にかじを切りつつある。ただ防衛費を増やすことと防衛力の抜本的強化とは別物であると織田邦男元空将が警鐘を鳴らす。戦闘機や護衛艦といった装備は契約から納入まで数年かかるのだ。それまでの期間を持ちこたえるために、想定されるグレーゾーン事態に対処できる「平時法制」の整備を急ぐべきだとも指摘する。いざ日本有事の際、米軍がすぐに来援するとはかぎらない。ジャーナリストの小笠原理恵氏は、長期間にわたって他国の侵攻に対処できる継戦能力の必要性を強調。先の大戦の反省を生かし、弾薬・糧食の輸送態勢の整備が急務だと訴えた。

8月6日の広島で、自民党の高市早苗政調会長(当時)と評論家の江崎道朗氏が、近隣諸国の脅威に対し「核を『持ち込ませず』では核抑止ができない」とタブーなき議論を展開。通信社・NNAオーストラリアの西原哲也代表取締役は、日本は台湾有事に備えるためにも、豪英米3カ国による安全保障枠組み協定「AUKUS(オーカス)」への参加を急ぐべきだと主張した。明星大学の山下善明名誉教授は、日本は「不戦敗国家」に甘んじていないかと問題提起する。(溝上健良)

国家として何をすべきか 俎上に載らぬ重要事

北朝鮮が日本人拉致を認めた小泉純一郎首相(当時)の訪朝から20年がたった。モラロジー道徳教育財団教授、西岡力氏と元内閣官房参与・元参院議員、中山恭子氏の対談では、晴れて故郷の地に「一時帰国」した拉致被害者5人が祖国日本にとどまることが決まるまでの攻防が明らかにされる。北朝鮮に帰すという約束は果たさなければならない―。おかしな意見が支配的だった政府部内の考えがなぜ、どうやって覆ったのか。「国家として何をすべきか」という根本的な問いを突き付けられる中で、5人の胸の内を推し量りながら回答を探し続ける様子は、読んでいても緊張が走る。拉致被害者、横田めぐみさんの母、横田早紀江さんの苦しい胸の内をまとめた手記には、多くの国民が共有すべき思いが込められている。

特集「中国が付け入る隙」では日本自身が中国の浸透を許す状況にあることを浮き彫りにする。本誌編集部が北海道夕張市への中国資本の進出の経緯を追った。八重山日報編集主幹、仲新城誠氏による沖縄県知事選の報告では眼前にある中国の脅威が俎上(そじょう)に載らなかったおかしさを詳報。葬祭系ユーチューバー、佐藤信顕氏は東京23区の火葬場が中国資本の支配下にあると警鐘を鳴らす。(安藤慶太)

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