主張

防衛力有識者会議 「水増し」では有事を招く

防衛力強化や財源などを話し合う政府の有識者会議が始まった。年末の国家安全保障戦略などの改定や予算編成に向け、提言をまとめる。

初会合で、防衛力強化の必要性で一致したのは妥当だ。大切なのは、その認識を速やかに、十分な予算規模で実現する方策を示すことである。

軍拡を急速に進めた中国などの周辺国に比べ、日本の防衛力は相対的に弱体化した。放置すれば日本周辺の軍事バランスはさらに悪化し続け、台湾有事、南西有事の誘発を招くことになる。

同会議が最も重視すべきは自衛隊を精強にして抑止力を高めることである。それには防衛費の「真水」の大幅増は欠かせない。

財源論議は大切である。ただし、他省庁の予算を無節操にかき集めて国防関係費とする「水増し」を図れば、自衛隊の抑止力、対処力向上を妨げる。「水増し」は中国人民解放軍や北朝鮮人民軍、ロシア軍を喜ばせ、侵略を誘発しかねない危うい選択だ。

万一有事になれば、多くの人命が失われ、国内総生産(GDP)比2%以上という北大西洋条約機構(NATO)基準よりもはるかに多額の財政支出を招く。それを防ぐのが防衛費の「真水」による抑止力強化だと肝に銘じたい。

岸田文雄首相は初会合で日本周辺での核・ミサイル能力向上や一方的な現状変更の試み、サイバーなど新領域、国民保護―といった課題を列挙した。「あらゆる選択肢を排除せず、防衛力を抜本的に強化していく」と語った。省庁の縦割りを打破し、政府全体の資源と能力を活用する「総合的な防衛体制の強化」も表明した。

縦割り打破は意義がある。有事の際、自衛隊は戦闘に備えるため、シェルター確保や住民避難などの国民保護は総務省や自治体、警察、消防の役割だ。自衛隊や米軍が使いやすい港湾、空港、道路の整備は平時から欠かせない。軍民両用技術の研究促進も急がれる。国民を守る態勢は広義の国防につながる。

これらの一部にはNATO基準で国防費に含まれる分野があり、国防関係の費用に計上できるものはあるだろう。それでも、防衛費の「真水」増を圧縮すべく、縦割り廃止の看板で「水増し」に走れば国民への裏切りになる。偽りの国防費では平和は決して守れないからである。

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