雨が多いタイの水害、日本流の貯留槽が救う 秩父ケミカル、プラ製ブロックで簡易に

浸水被害軽減のため、タイのラッカバン工業団地に埋設されるプラスチック製ブロック=2019年11月(秩父ケミカル提供)
浸水被害軽減のため、タイのラッカバン工業団地に埋設されるプラスチック製ブロック=2019年11月(秩父ケミカル提供)

日本の中小企業の技術が、雨の多いタイの水害軽減に役立とうとしている。雨水を流し込み、一時的に地中にためておく貯留槽を簡易に構築できるプラスチック製ブロックによる工法が現地で高い評価を得ている。受注実績を積み上げることで現地生産も視野に入れており、タイを拠点にベトナム、カンボジアなど他の東南アジア諸国にも納入を目指している。

この企業は秩父ケミカル(東京都千代田区)。社員15人ほどの小さな会社だが、地中に貯留槽をつくるプラ製ブロックの分野では、国内市場で約15%のシェアを持つ大手ともいえる存在だ。

このプラ製ブロックは「子供が遊ぶブロックを大きくしたようなもの」とイメージすると分かりやすい。支柱代わりに地中に設置し、その周りをシートで覆うことで貯留槽をつくることができる。コンクリート製貯留槽に比べ、低コスト、短期間でつくれるメリットがあり、国内では現在、施工件数、貯留容量ともプラ製ブロックによる貯留槽が主流になっている。

ただ、国内では2016(平成28)年度の5255件をピークに施工件数は伸び悩んでおり、「このままでは頭打ちになる」(吉田寿人社長)と判断。国際協力機構(JICA)の支援事業を活用して、雨の多い東南アジア市場の開拓を進めることにした。

当初はインドネシアで浸水被害軽減の実証に取り組んだ。ただ、効果については高い評価を得たものの、現地政府機関などから資金的なバックアップを得られず、事業化は断念。その結果を踏まえて、新たに市場開拓を目指したのがタイだった。

タイでは11年に記録的な大洪水が発生。現地に進出している日系企業約450社が被災し、長期間にわたって生産が止まるなど大きな被害が出た。

こうしたこともあって、実証施設として19年12月にバンコクにあるラッカバン工業団地に容量約300立方メートルの貯留槽を設置した。この工業団地では大雨が降ると側溝から水があふれて道路が冠水し、自動車が通れないほどの状態になることもあったというが、工業団地を管理するタイ工業団地公社から貯留槽の効果について高い評価を得たという。昨年8月にはバンコクの公園にも容量80立方メートルの貯留槽を設置した。

さらに別の公園に容量1万立方メートルを超える大規模な貯留槽が計画されている。貯留槽の設置にはプラ製ブロックをいかに最適に敷設するかが重要となるが、豊富なノウハウを持つ秩父ケミカルが設計に協力している。ほかに現地の民間企業からも引き合いがあり、設計に携わっている。

タイのラッカバン工業団地に埋設されたプラスチック製ブロック=2019年11月(秩父ケミカル提供)
タイのラッカバン工業団地に埋設されたプラスチック製ブロック=2019年11月(秩父ケミカル提供)

タイで実績を積む中で、検討を進めているのが現地生産だ。現在は歴史的な円安局面にあるが、「日本から輸出したくてもなかなかコンテナを確保できない」(吉田社長)こともあり、現地に工場を設けた方が有利と判断している。現在、原料や成型機の調達、販売ルートなどについて検討しており、2年後をめどに現地生産に踏み切りたい考えだ。

タイに生産拠点ができれば、他の東南アジア諸国にも製品を供給しやすくなる。タイだけでなく、東南アジアの水害軽減へ広く貢献することを思い描いている。(高橋俊一)

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