大谷「年俸調停」回避の背景 来シーズン中に再び争奪戦必至

2日のレンジャーズ戦の1回、後続の適時打で三塁に進んだエンゼルス・大谷=アナハイム(共同)
2日のレンジャーズ戦の1回、後続の適時打で三塁に進んだエンゼルス・大谷=アナハイム(共同)

米大リーグ、エンゼルスとの間で1年3000万ドル(約43億5千万円)で来季契約に合意した大谷翔平選手(28)。今季が2年契約の最終年だった二刀流は、今オフに権利を得る「年俸調停権」を回避し、今季の550万ドル(約7億9800万円)からの大幅昇給を勝ち取った。ただ、来シーズン終了後には移籍先を自由に選べるフリーエージェント(FA)権を取得する見込みだけに再び争奪戦となるのは必至。年俸調停を回避した背景には、大谷とエンゼルス双方の思惑が見え隠れする。

来年3月開催のWBCの存在

大リーグでの年俸調停は1973年にスタート。当時はFA制度もなかったため、選手の待遇改善を目的に始まった。現行の制度は大リーグの出場登録日数が3年以上6年未満の選手が対象。選手側と球団側が期限日までに契約合意に至らなかった際には希望の年俸額を双方とも提示し、公聴会が開かれる。それを踏まえた採決では選手側、球団側のいずれかの希望額が採用される仕組みだ。

年俸調停を大谷側が回避したことについて、大リーグ評論家の福島良一さんは「シーズン前の来年3月にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)も控えている。シーズン前に契約のめどをつけることでトレーニングに集中したかったことに加え、交渉が決裂することで、意中ではない球団にトレードされるリスクを回避したかったのではないか」と指摘する。

大谷もWBC出場には意欲を示しており、今オフは例年よりも始動を早める可能性がある。仮に年俸調停となった場合、3000万ドル以上の年俸を勝ち取る可能性も十分考えられたが、公聴会が開催されるのはシーズン直前の2月。交渉は代理人に委ねられるとはいえトレーニングに集中できない可能性もあった。福島氏は「今回の契約合意によって、開幕前にトレードされる可能性は現実的でなくなった」と話す。

FAの場合は「5000万ドル以上」の大型契約も

異例ともいえる〝早期決着〟となった今回の契約合意だが、福島氏は「今シーズン途中に判明した球団売却の話も(契約合意に)影響しているだろう」と指摘する。

エンゼルスは今年8月、オーナーを務めるアート・モレノ氏が球団売却を検討していることを発表した。福島氏は「球団とすれば、新しいオーナーが決定するまで大谷を残すことでチームの価値を維持できるし、上げることもできる」とした上で「チームとしても、FA権を取得するまでは戦力としてとどめておきたいのではないか」と推察する。

今回の契約合意については、米国メディアも反応。ニューヨーク・ポスト紙(電子版)は「年俸調停の不確実性が取り除かれたことによって、市場での大谷の価値がさらに魅力的になる可能性がある」と分析した。

来年のプレーオフ進出が厳しくなった場合、大リーグでは有力選手をトレードで他球団(プレーオフ進出が狙える球団)に放出し、将来有望な若手選手を獲得するケースが多い。そのため、プレーオフの動向次第ではシーズン途中にトレードされる可能性も否定できないが、「FAとなる場合には今回の年俸がベースとなるだけに(単年ベースで)5000万ドル(約72億5000万円)以上の大型契約になる可能性もある」(福島氏)という。

今回の契約合意は、来年の大谷の年俸が決まったというだけにとどまらず、飛躍を続ける大谷の「市場価値」が示されたといえそうだ。(浅野英介)


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