インフル早期流行に警戒 コロナ同時流行も 鍵はワクチン

過去2シーズンは感染報告が低水準で推移したインフルエンザだが、今シーズンは早期流行や新型コロナウイルスとの同時流行への警戒感が強まっている。流行予測の指標となるオーストラリアでインフル流行が確認され、国内の抗体保有率も低下しているためだ。専門家は今月から本格化するインフルのワクチン接種の重要性を指摘し、「政府や自治体は発熱時の受診の流れなどを改めて整理し、周知する必要がある」と強調した。

新型コロナが世界で流行した2020(令和2)年春以降、インフル患者は世界的に大きく減少。だが、世界保健機関(WHO)のデータによると、昨年11月ごろからインフルの報告数は増え始めている。

専門家らが特に注目するのは日本での流行を予測する上で参考となる南半球の感染状況だ。豪州では3月下旬から増加が顕著になり、6月にピークを迎えた。ピーク時の報告数は少なくとも2000年代では最多だった。

季節が逆の南半球での流行時期が例年よりも早かったことから、日本でも早期の流行が懸念されている。政府コロナ対策分科会の尾身茂会長は9月上旬、報道陣の取材に「インフルも多くは抗体を持っていない上、コロナウイルスも残存し、同時流行が起きる可能性がある。どちらが先に立ち上がるか分からないが、いずれそのような時期が来る」との見方を示した。

日本感染症学会は、豪州でウイルス型判明分の約8割に上るなどしたA香港型(H3N2亜型)が「国内の流行主体になる可能性がある」と指摘。A香港型が流行すると死亡や入院が増加する傾向にあるという。

国立感染症研究所によると、昨年夏に採取した血清でのA香港型に対する年代別の抗体保有率は、20~24歳が最も高く50%超だった一方、0~4歳では10%台にとどまる。コロナ禍前と比べ、大幅に低い状況がうかがえる。

東京医科大の濱田篤郎特任教授(渡航医学)は「ワクチンは一定程度接種されてきたが、感染した人が少なく抗体が下がっている。南半球での流行によって火種が生まれた」と指摘。水際対策の緩和をきっかけに国内にインフルが持ち込まれる可能性が高いとみる。

ワクチン接種で抗体価の上昇が見込めるが、インフルは流行株が毎年変化するため、年によってワクチンの有効率に差がある。ただ、過去の国内研究では、小児で4~6割程度の発病予防効果があったとの報告があるほか、施設に入所する高齢者では8割の死亡を阻止する効果があったとされる。

今季のインフルワクチン接種は10月から本格的に始まり、新型コロナワクチンとの同時接種も可能になった。記録の残る中で最多の約7000万人分が供給される見込みで、重症化リスクの高い65歳以上は定期接種の対象になっている。

ワクチン接種に加え、インフルとコロナが同時流行した場合の対処も重要になる。コロナと違い、インフルには簡易的に使用できる経口薬があり、早期に服用する必要がある。一方で、コロナの検査キットはネットでも販売されているが、インフルは医療機関でしか検査できない。

濱田氏は「自宅でコロナの抗原検査を行い、陰性だった場合にインフルを疑って医療機関を受診する、といった流れを整理しておく必要がある」と話した。

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