米、台湾「同盟国」指定見送り 政権が対中摩擦回避

バイデン大統領(ゲッティ=共同)
バイデン大統領(ゲッティ=共同)

米上院外交委員会が9月14日に可決した「台湾政策法」は、ロシアのウクライナ侵攻を教訓にして、台湾の中国に対する抑止力向上を主眼とした内容となった。だが、「同盟国」指名など台湾の地位をめぐる条項は原案から後退した。中国への過度な刺激を避けたいバイデン政権が修正を働きかけた結果だった。

(ワシントン 渡辺浩生)

法案は6月に超党派で提出され、1979年の台湾関係法制定以来の台湾政策をめぐる「最重要法」(米紙)と行方が注目されていた。修正案を提出したのは法案起草者のメネンデス委員長(民主)。9月14日の審議で、「米国は戦争を望まない。信頼できる抑止力を持つには事態を注視する必要がある」と理由を述べた。

原案は「台湾は『NATO(北大西洋条約機構)非加盟の主要同盟国(MNNA)』に指定される」と明記していた。MNNAは、オーストラリア、イスラエル、日本、フィリピン、韓国など18カ国。だが、修正案では、台湾の「同盟」入りは撤回され、台湾はMNNAに「指定されたかのように扱われる」とされた。

台湾は2003年、米国防総省内でMNNAと位置づけられ、議会に通達された経緯がある。今回、上院委の法案に盛り込まれた意義は軽くないものの、当時の現状維持を踏み越えて、「NATO並み」とされることはなかっった。

また、原案では、米国にある台湾の窓口機関「台北経済文化代表処」を「台湾代表処」に名称変更し、米側の対台湾窓口機関、米国在台協会(AIT)台北事務所の所長の選定には、在外大使並みに上院の承認を要するとされた。しかし、名称変更は「議会の意見」とするにとどめ、事務所長の上院承認もなくなった。

これら台湾の地位に絡む条項が修正されたのは、台湾を「領土の一部」とする中国が、米国が自ら台湾を巡る現状変更を図ったと反発するとの懸念が当局者や専門家に広がったからだ。

アーミテージ元国務副長官が所長を務める政策研究機関「アーミテージ・インスティテュート」は声明で「消防車の到着前に台湾海峡の火に油を注ぐようなものだ」とし、中国の台湾侵攻に備える前に米台関係の定義を変えるべきではないと訴えた。

中国が8月のペロシ下院議長訪台を機に軍事圧力を高める中、国家安全保障会議(NSC)幹部らは外交委と協議し、修正を働きかけた。「法案が裏目に出て、中国が台湾侵攻の時期を早める恐れがある」(有力委員)という意見にメネンデス氏らも同調した。

一方、無償援助が可能となる国務省の「対外軍事資金供与(FMF)」を通じた支援の規模は、4年間で45億ドル(約6500億円)とした原案から5年間で65億ドルに拡大された。訓練協力や武器売却の迅速化、中国の指導層や金融機関に対する制裁措置などの安保条項は維持された。

ただ、ロムニー委員(共和)は中国に「動くのは今だ」と思わせないよう、国防予算の中で「ひっそり行うべきだ」とし、法案への規模明記に懸念を示した。

修正案は賛成17、反対5で可決されたが、議会関係者によると本会議の採決に進む見通しは立っていない。台湾系研究者は「米国が態度で示さねば、どの国がやるのか」と、MNNA指定見送りなどへの落胆を隠さない。

折しもバイデン大統領は米CBSのインタビューで中国が台湾に侵攻したら守るかを問われ「イエスだ」と明言。当局者は「一つの中国」政策に変更はないと火消しに回った。

中国が台湾の武力統一に動く脅威は「27年に顕在化する」(デービッドソン前インド太平洋軍司令官)とされる。台湾政策法を巡る米国の迷走は、緊張の激化を避けつつ、侵攻抑止に必要な能力を備えさせる難しさを浮き彫りにした。

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