パナソニック再生

競争力と現場力を磨く 楠見雄規社長が改革に込めた思い

パナソニックホールディングスの楠見雄規社長 =大阪府門真市の同社本社
パナソニックホールディングスの楠見雄規社長 =大阪府門真市の同社本社

パナソニックホールディングス(HD)が持ち株会社制に移行してから10月で半年となった。傘下には、家電や空調事業の「パナソニック」など8つの子会社があり、独立採算で利益を追求している。一方、この半年の間にHDの楠見雄規社長は新たな経営計画も示した。子会社がそれぞれ競争力を高めることを期待する楠見氏に、これからの成長戦略を聞いた。(桑島浩任)

――4月からスタートした持ち株会社制は、狙い通りに機能するか

楠見 以前は新たな取り組みをするにも本社にお伺いを立てる必要があり、時間がかかっていた。だったら事業を分かっている人たちで判断したらいいということで会社を分けた。それぞれの事業会社が自らで競争力をつけてほしい。

――今年度から3年累計で営業キャッシュフロー(本業による現金収支)2兆円を目指す経営戦略を打ち出した

楠見 徹底してキャッシュを稼ぎ、成長投資に回していく。再び成長するには不可欠な目標です。まずは3年間、各事業会社に競争力をつけてもらい、目標を達成したい。

《新体制への移行にあたり、楠見社長は「現場力」の重要性を繰り返し強調してきた。その背景にはかつて自動車関連事業や電池事業のトップとして、トヨタ自動車との合弁会社設立にたずさわった経験がある。トヨタ式の「カイゼン」を念頭に置きながら現場革新を進める》

-―必要な現場力とは何か

楠見 例えば工場での人の動き1秒、材料の1滴にこだわって効率の最高記録を日々更新することがトヨタでは徹底されている。わが社にも私が入社したころにはそういう雰囲気があった。それが今では決められた業務をやっているだけという現場があちこちにある。松下電器時代は、製品の品質やサービスで他社に負けない立派な仕事をして、結果としてお客さまに選んでいただくという考え方だった。1960年代、70年代には日本の製造業としてトヨタ、松下が並び称された時代もあった。これだけ差がつくのは社員一人一人がやるべきことが忘れ去られていたからではないか

―-パナソニックも業務の効率化や現場改善は続けているのではないか

楠見 進化のスピードが違う。ものづくりも1回作り方が決まったら同じことを繰り返すのと、常に進化させていくのとでは差がつく。また、加工の技術が上がったからといって生産で人手をかけずに楽ができるわけではない。だから「カイゼン」というのは終わりがない。その意識が根付いているかいないかの違いがあった

《創業者、松下幸之助氏が示した「精神的な安定と物資の無尽蔵な供給が相まって初めて、人生の幸福が安定する」という使命について、楠見社長は「90年経た今でも通用する」と強調する。令和3年10月には約60年ぶりに経営基本方針も改定し、社員の意識改革を進める》

-―改めて、創業者の経営哲学をどうとらえているか

楠見 創業者の経営哲学の前提には、精神的な安定と物資の無尽蔵な供給が相まって初めて、人生の幸福が安定するという「物心一如」の考えがある。つまり、心身のウェルビーイング(満たされた状態)という今まさに重要とされる考え方だ。

―-経営基本方針も60年ぶりに改定した

楠見 社員一人一人に経営基本方針を読んでもらって、それに沿って行動してもらおうと思い、古い言葉や難しい文章を現代的な解釈にした。基本方針をもとに社員が自らの力を100%も120%も発揮して成長し、それが会社の成長にもつながる。外科的治療ではなく、漢方薬みたいなものかもしれないが、企業の内なる体質を変えていくための取り組みだ

―-二酸化炭素排出量削減でも高い目標を掲げている

楠見 将来にわたって子や孫がよりよい環境で生活できることを考えたら、地球温暖化もいち早く止めなければということで、2050(令和32)年度までに3億トン以上の二酸化炭素削減に貢献することを目指す「グリーンインパクト」というコンセプトを作った。昭和7年の第1回創業記念式で創業者が掲げた250年計画。この250年先のウェルビーイングを考えたときに、たとえ蓋然性がないといわれても高い目標を置いて進めていかなければならない。

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