「住民投票」非難決議案 露拒否権で否決 安保理

ニューヨークの国連本部(AP)
ニューヨークの国連本部(AP)

【ニューヨーク=平田雄介】国連安全保障理事会は30日、ロシアがウクライナ東・南部4州の併合のため実施した「住民投票」を非難し、露軍の即時撤退などを求める決議案を採決した。常任理事国ロシアの拒否権行使により、否決された。米国は、国連総会に緊急特別会合の開催を要請し、ロシアの責任を問う。

否決された決議案は、米国がアルバニアと起草した。ロシアと親露派勢力による「違法な住民投票と称する行為」を非難したうえで、全ての国にウクライナ領に関する地位の変更を承認しないよう求めていた。米英仏など10カ国が賛成し、ロシアが反対、中国とインド、ブラジル、ガボンの4カ国が棄権に回った。

棄権の理由について、4カ国の代表は「さらなる事態の悪化と緊張の高まりを避けるためだ」などと説明した。プーチン露大統領はウクライナ4州の併合を宣言し、「露領土と国民を守るためにあらゆる手段を講じる」と核兵器の使用を示唆している。インドのカンボジ国連大使は演説で、ジャイシャンカル外相の「核問題は特に心配だ」との発言を踏襲しており、「核の恫喝(どうかつ)」が4カ国の投票行動に影響した可能性がある。

4カ国の代表は一方で、「全ての国の主権と領土の保全を尊重する国連憲章の原則」への賛意も表明。ブラジルのコスタ国連大使は「紛争下で自由な意思の表明が行われたとは考えられず、住民投票を正当だとは認められない」と述べた。

英国のウッドワード国連大使は「ロシアの違法な併合の試みを承認する理事国は一つもない」と指摘し、プーチン氏の4州併合宣言を「幻想だ」と断じた。

ロシアの拒否権行使は、ロシアのウクライナ侵略を非難する決議案(2月25日)▽弾道ミサイルを発射した北朝鮮への制裁を強化する決議案(5月26日)などに続き、今年5度目。

今回の決議案は、27日に米国が提出を表明してから3日間での採決となり、棄権国から「拙速だ」(ブラジル)との不満が漏れた。米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は「拙速なのは、ロシアの違法な併合行為だ。安保理は、ウクライナの主権と領土を守るために対応しなければならなかった」と反論した。

政策研究機関「国際危機グループ」ニューヨーク事務所のリチャード・ゴーワン国連担当部長は「米欧の理事国は、ロシアの『住民投票』実施に備え、数カ月前から決議案提出を計画していた。ロシアの拒否権行使も想定の範囲内。『ウクライナ疲れ』が見え、紛争に直接の利害がない国にとっても主権と領土の尊重は聖域で、プーチン氏はミスをした。米欧は、国連総会での多数派形成に自信を持っている」と述べた。

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