ウクライナから淡路島へ 平和祈る22歳のバレリーナ

針山愛美さん(中央)の指導のもと、淡路島で日々練習を重ねるスベトラーナ・シュリヒテルさん(右)と、ネリア・イワノワさん
針山愛美さん(中央)の指導のもと、淡路島で日々練習を重ねるスベトラーナ・シュリヒテルさん(右)と、ネリア・イワノワさん

バレエ大国のウクライナから戦禍をくぐり抜け、約4カ月前に兵庫県・淡路島へたどり着いた2人のバレエダンサーがいる。言葉も文化も異なる日本でバレエに打ち込む日々。長期化する軍事侵攻に不安もあるが、「私たちのバレエを通して、ウクライナのことを知ってほしい」と前を向く。再び舞台に立てる喜びをかみしめながら、毎日の練習に励んでいる。

「だんだん生活にも慣れてきて、最近は大阪に出かけることもあります」。こうはにかむのは、西部リビウの国立バレエ団に所属していたスベトラーナ・シュリヒテルさん(22)とネリア・イワノワさん(22)。5月に祖国を離れた2人は現在、パソナグループの支援のもと淡路島で生活している。

2人が所属していたバレエ団では、多いときで月に20回近い公演があった。多忙ながら充実した時間を過ごしていたイワノワさんは、「ステージで踊っている瞬間や舞台を終えた後の達成感が大好き」と話す。

しかし、そんな日常はロシア軍の侵攻で一変した。劇場公演は中止に追い込まれ、レッスンの最中も空襲警報が鳴ると、シェルターに逃げ込む日々。落ち着いてバレエと向き合える環境ではなくなっていった。

そんな同国の苦境を知り、手を差し伸べたのが、淡路島を拠点に活動する針山愛美(えみ)さん(45)だった。ロシア国立ボリショイバレエ学校を首席で卒業した世界的バレエダンサーで、以前からウクライナ出身のダンサーとも交流があった。縁のある両国が戦争状態にあることに心を痛め、「自分にできることはないか」とウクライナのダンサーを淡路島に受け入れることを発案した。

支援には本社機能の一部移転を淡路島に進めるパソナグループが関与。社員寮の提供などで、ダンサーの受け入れ準備を進めた。

日本でサポートが受けられることを知った2人は来日を決意し、慣れ親しんだバレエ団を退団。来日前、母国で迎えた最後の公演は忘れられないといい、シュリヒテルさんは「悲しい気持ちでしたが、団員が集まってくれて『また戻ってきてね』と言ってくれた」。目を赤くしながら当時を振り返る。

広がる活動の場

生まれ育った故郷とまったく異なる環境の淡路島で再出発した2人。針山さんは「若いころの自分と重なる。決心してやってきた2人に、できるかぎりのことをしたい」と語る。

言葉や文化の壁はあるが、日本でなぜバレエを続けるのか、2人は新たな意義を見いだしている。「ダンサーという立場で(日本から)ウクライナをサポートしたいし、助けたい」

ウクライナ独立記念日に行われた公演で踊るスベトラーナ・シュリヒテルさん(右)と、ネリア・イワノワさん=パソナグループ提供
ウクライナ独立記念日に行われた公演で踊るスベトラーナ・シュリヒテルさん(右)と、ネリア・イワノワさん=パソナグループ提供

ウクライナの独立記念日に当たる8月24日に行われた公演では、祖国のことを多くの人に知ってほしいと、クラシックバレエだけでなくウクライナの民族舞踊などを披露した。針山さんの演出で、日本の若手ダンサーらとともに舞台をつくりあげ、世界平和を訴えた。今後も日本でさまざまな舞台に挑戦したいという2人。9月末から淡路島で開催中のパフォーマンス公演「あわじアートサーカス2022」にも出演するなど、活躍の場を広げている。

戦争が始まり7カ月が過ぎた。2人は「こんなに続くとは思っていなかった。一刻も早く平和が訪れてほしい」と祖国の行く末を案じる。悲しい戦争が終わることを信じ、遠く離れた異国の舞台で踊り続ける。(清水更沙)

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