なんとも惜しいクルマをなくしました ホンダNSXタイプS試乗記

ワインディング・ロードに至り、ま、その前にも試しに切り替えていたわけですけれど、スポーツ+(プラス)に切り替えると、V6が蓄電量にかかわらず目を覚まし、室内に入ってくるエンジン音のボリュームが大きくもなる。磁性流体式可変ダンパーはキリリと引き締まり、乗り心地は俄然、硬くなって、電動パワー・ステアリングの手応えはやや重くなる。

回転を上げていると気持ちのよい、乗り始めたときには思いもよらなかった快音を聴かせてくれる。低周波のゴーっというエンジンの排気音と、キーンッという高周波の電動系のサウンドが二重奏となり、モーターとエンジンの連携プレイにより、すばらしいアクセル・レスポンスと、フロントの左右モーターのトルク・ベクタリングがもたらす旋回能力がくわわる。

旋回能力に、どこまで2基のモーターの制御が反映しているのか……ほとんど筆者にはわからず、つまりそれぐらい不自然さがない。いっそ、なくてもいいのではないか、と思うほどだけれど、あるからこその旋回能力なのだろう。ともかくストレス・フリーのドライビングが堪能できる。

別注のカーボン・セラミック・ブレーキを試乗車は装着しており、このブレーキが強力で安定して制動力を約束してくれる。9速DCTはブリッピングしながらのダウンシフトも演じ、グオン、ぐおおおおおおおんっ、ぐおおおおおおんっ、ぐおおおおおんっ、ひゅいいいいいいいんっという男女混声合唱団が私の耳元で歌い続ける。

2代目NSXのような3モーターのハイブリッドのスーパーカーは、2011年に発表された限定918台のポルシェ「918スパイダー」と、2019年発表のフェラーリ「SF90ストラダーレ」ぐらい。918スパイダーは当時の新車価格68万4800ユーロ(ユーロ建てのみ:1ユーロ・142.8円の場合約9780万円)、現在も販売中のSF90ストラダーレは5436万円。これら2台はどちらもPHEV(プラグイン・ハイブリッド)で、しかもV8であるのに対し、NSXはプラグインではないハイブリッドで、V6。という違いはあるにせよ、価格は2794万円と、ざっと半額、もしくは半額以下である。

過剰にスーパー過ぎないスーパー・スポーツ。量産総合メーカーのホンダの狙いはそこにあったわけだけれど、2代目NSXの真の価値が明らかになるには、やっぱりもうちょっと時間が必要なのかもしれない。

それにしても……なんとも惜しいクルマをなくしました。合掌。

いや、ホンダのひとだったら、こう考えるな。また、つくればいいじゃん。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)

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