主張

偽りの住民投票 世界は「茶番」の全否定を

「住民投票」だと称して選挙スタッフが投票箱を持ち、威嚇役の軍人を同行して有権者宅を戸別訪問して回る。

これが茶番でなくて何なのか。

プーチン露政権が大義なき侵略を続けるウクライナの東部・南部の占領地4州で、ロシアへの編入の是非を問う「住民投票」を実施し、圧倒的多数の賛成を得たという。公表された各州の賛成率は、87~99%という異様な高さだ。

8年前に南部クリミア半島がロシアに併合されたときと同様、銃口の圧力下で強行された。偽りの住民投票である。到底受け入れるわけにはいかない。

プーチン大統領は投票結果を受けて30日にも4州の併合を宣言する算段だが、ウクライナのゼレンスキー大統領は、「全ての国際機関からロシアを追放し、対露制裁を強化するよう」訴えた。国際社会はこれに応え、この茶番を全否定すべきだ。

ロシア国内は今、クリミア併合時の高揚感どころか、深刻な兵員不足による予備役招集の公表で騒然としている。反戦・抗議デモが頻発し、招集逃れで国外脱出の若者が国境に押し寄せている。

今回の住民投票は、今月初めから始まったウクライナの激しい反転攻勢で、ロシア軍が後退を余儀なくされる事態に焦ったプーチン氏が、戦果欲しさと兵員補充のため急遽(きゅうきょ)命じたものだ。

4州を強制併合すればロシアからクリミアまで陸の回廊がつながる。プーチン氏は「ロシア本土とウクライナの親ロシア派地域の安全が脅かされた場合は、ロシアが持つすべての武器の使用をも辞さない」と述べ、戦術核攻撃の可能性をも示唆している。絶対に許してはならない。

プーチン政権は併合する4州でウクライナ人を「ロシア兵」に仕立て、何の訓練も受けさせずに最前線に送り込んで同じウクライナ人と戦わせる計画だという。

プーチン氏の冷血さと悍(おぞ)ましさには戦慄を覚えざるをえない。

すでにウクライナでは、無辜(むこ)の市民を含めて数万人がロシア軍の犠牲となった。米国防総省によると、ロシア兵にも約8万人の死傷者が出ている。

プーチン氏は一刻も早く残忍な殺戮(さつりく)を止(や)め、ウクライナ領土に対する帝国主義的妄執を捨ててロシア軍を撤退させねばならない。

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