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岡田野球で阪神は変わる…監督の力で勝てる試合は無限大 植村徹也

ヤクルト―阪神戦の解説のため、神宮球場に入る岡田彰布氏=28日
ヤクルト―阪神戦の解説のため、神宮球場に入る岡田彰布氏=28日

阪神の来季新監督として元監督の岡田彰布氏(64)が内定した。レギュラーシーズン終了後にも正式に発表される。2008年にV逸の責任を取って退任後、15年ぶりの阪神監督復帰となる。

岡田氏は04年から阪神の第30代監督に就任すると七回に藤川球児、八回にジェフ・ウィリアムス、九回に久保田智之という勝利の方程式「JFK」を構築。05年にはリーグ優勝を果たした。阪神監督在任5シーズンで優勝を含む4度のAクラス。シーズン80勝を超えた年が3度もある。17年も優勝から遠ざかっている阪神球団にとってはV奪回のキリ札といえる。

しかし、阪神監督を退任後の2010年から3シーズン指揮を執ったオリックスでは一度もAクラス入りを果たせず、2度の負け越し。12年には成績不振で途中休養となっている。岡田氏の手腕が高く評価される一方で懸念する声が出ているのは阪神、オリックスの8シーズンで刻んだ〝光と影〟があるからだ。

野球界では「シーズンで監督の力で勝てるのはせいぜい数試合だ」という言葉をよく耳にする。いくら監督が優秀でも実際にグラウンドでプレーするのは選手たちだ。巧みな選手起用や作戦を講じても選手たちに実力がなかったり、不運が重なれば監督の力の及ぶ範囲には限界がある…という立て付けだ。しかし、実際はどうか…。長くプロ野球を取材した経験から見れば、逆に「監督の力で勝てる試合は無限大にある」と思う。

岡田野球とはどんなものだろうか。過去に何度か、阪神の春季キャンプの練習を岡田氏の隣の席で見させていただいた。隣から聞こえてくるのは「何やっとんのよ」「そんなんお前なぁ…」。ブツブツ言っているではないか。例えば投手と捕手のバント処理練習の場面。投手は次々と捕手に投球し、打者役のコーチが一塁や三塁側にボールを転がして捕手が送球する塁を投手に指示する練習だ。こちらは〝いつもの〟練習と思って見ていたが、岡田氏の観点はまるで違った。

「アレ、見てみいな。投手の誰もが捕手にストライクを投げてないやんか。走者一塁で打者はボール球は絶対にバントせん。投手はバントやらせて、一塁走者を二塁で殺すなら絶対にストライクを投げなアカンのや。ほれ、またとんでもないボール球投げとる。なに教えとんのよ。(基本ができてない?)そらそうよ」

続いてシートノックの練習。コーチのノックした打球を処理した外野手が連係する内野手に返球し、ホームや三塁に送球する練習だった。外野手がボールを捕ると、内野のキーマンが声を出して送球先を指示していた。これも〝いつもの〟練習風景…。岡田氏は-。

「アカンよ。誰がこの練習は指導してんねん。満員の観衆がおる甲子園球場であの内野手の声が届くわけないやろ。ここで磨かないかんのは走者の状況を外野手が自分でジャッジする感覚や。いくら内野手が大声だしても耳に届くかいな」

つまり、誰が見ても普通のプレーのひとつひとつが野球の基本に準じているのか、プレー環境に適応しているのか…。岡田氏が強調していたのは野球というゲームは〝特別なこと〟で勝つのではなく、日頃の練習や研鑽(けんさん)で培った、基本を忠実にしたプレーの積み重ねしかない…という考えのように感じた。

監督就任後、きっと選手たちには岡田イズムをたたき込み、それぞれのスキルを向上させるだろう。その先にチーム失策数の減少や、ここぞの場面で打てる打撃陣の勝負強さが成績面で表れてくるような気がする。阪神の野球が大きく変わるのだ。ただ、なぜオリックスで結果が出なかったのか。球団首脳や選手たちとの人間関係か? 単なる戦力不足だったのか? 岡田氏には野球人生の失敗も糧にして、阪神を勝たせてほしい。ムチャクチャ期待している。

(特別記者)

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