小林繁伝

球宴ファン投票選出、パは「南海・江夏」 虎番疾風録其の四(101)

昭和46年のオールスターゲーム第1戦で全パから連続9奪三振の新記録をマークした全セの江夏(阪神)。打者は9人目の加藤秀=兵庫・西宮球場
昭和46年のオールスターゲーム第1戦で全パから連続9奪三振の新記録をマークした全セの江夏(阪神)。打者は9人目の加藤秀=兵庫・西宮球場

昭和51年7月9日、オールスターゲーム(17日から)の「ファン投票」最終得票数が発表された。

最高得票数は王の24万1771票で、17回目の出場。現役監督の野村も21万4238票を獲得し20年連続1位で20回目の出場を決めた。セ・リーグは好調巨人が6つのポジションを占め、「投手部門」では小林が7万7047票を獲得して初の選出だ。

「プロ入りしたときにはオールスターどころか、1軍で投げられるかどうか不安だったのに…。うれしいです」と小林は大感激。

ファン投票選出選手は次の通り。

<セ・リーグ> <パ・リーグ>

【投】小林 繁(巨) 江夏 豊(南)

【捕】田淵幸一(神) 野村克也(南)

【一】王 貞治(巨) 加藤秀司(急)

【二】ジョンソン(巨) 山崎裕之(ロ)

【三】高田 繁(巨) 有藤道世(ロ)

【遊】藤田 平(神) 定岡智秋(南)

【外】張本 勲(巨) 福本 豊(急)

末次利光(巨) 大田卓司(太)

山本浩二(広) 島本講平(近)

パ・リーグの「投手部門」では江夏が2位太田幸司(近鉄)、3位山口高志(阪急)を抑え、5万8719票で選ばれた。大阪球場で記者団に取り囲まれた江夏は「ホンマかいな。なんか、かつがれとるような気分や。オレみたいなもんが入るなんておこがましいで。他に実績も人気もある選手がおるのに…」と照れくさそうに笑った。

江夏と「球宴」―といえば昭和46年の偉業が有名だ。第1戦に先発した江夏は1番の有藤(ロ)から基(西)―長池(急)―江藤(ロ)―土井(近)―東田(西)―阪本(急)―岡村(急)―加藤秀(急)と9打者連続奪三振。

9人中、左打者は加藤秀だけ。実は打席に入る前、加藤秀はパの濃人監督(ロ)に「ええ右打者がおるやないですか。代えてくださいよ。記録に残るのはイヤです」と訴え出ていた。ところが、公式戦で加藤秀によく打たれて負けていたロッテ。濃人監督は「お前も江夏と対戦して、ちょっとは調子を狂わせてこい」とそのまま打席に送ったという。

「ベンチにはノムさん(野村)もおるのに、狂わせてこいやで。信じられんやろ。それにしてもあのときの江夏の球はそりゃあ、速かった」とは加藤秀の回想である。

「ことしは南海の人間として出場するんやから、恥をかかんようにせんとな」

江夏の顔が引き締まった。(敬称略)

■小林繁伝102

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