日中国交正常化50年は、日台断交50年の節目でもある。このことについて多くの台湾人の思いは複雑だ。
台湾の外交部(外務省に相当)の欧江安報道官は29日、断交以降も「台湾と日本は民主主義などの価値観を共有する友人で、人々も深い感情で結ばれている」と強調し、さらなる関係発展への期待を表明した。
台湾では近年の世論調査で、「最も好きな国」に必ず日本がトップに挙がる。
しかし1972年の9月17日、当時の田中角栄首相の特使として、日中国交正常化の政府方針を説明するため派遣された自民党副総裁の椎名悦三郎氏の車列は、台北市の松山空港付近でデモ隊に囲まれ、フロントガラスが割られる車両もあったという。
台湾の外交評論家、呉嘉隆氏は「当時の台湾人にとり、親しくしていた友人に裏切られた気持ちだった。今の台日関係はどん底からスタートし、民間の力で発展させた」と解説する。
日台断交後、双方の交流は貿易や技術、文化などの実務面に限定された。だが台湾で90年代に民主化が実現し、知日派の李登輝氏らが政治を主導するようになると、交流が活発化した。
その後の2011年の東日本大震災では、台湾から当時の約200億円相当の義援金が寄せられたこともあり、日台はさらに接近した。
台湾の与党、民主進歩党の関係者は「近年、中国の対外拡張路線で圧力を受ける台湾と日本は、ますます関係を強化させることが必要だ」と指摘し、「これから新しい台日関係を築かなければならない」と話している。
(台北支局長 矢板明夫)