食料不足深刻 増える「昆虫ビジネス」 住商、飼料用の養殖加工企業に出資へ

住友商事が出資するニュートリション・テクノロジーズのアメリカミズアブの養殖場=マレーシア・ジョホール州
住友商事が出資するニュートリション・テクノロジーズのアメリカミズアブの養殖場=マレーシア・ジョホール州

商社などが昆虫を使ったビジネスを拡大している。住友商事は、家畜の餌に混ぜる昆虫の粉末を製造するシンガポールのスタートアップ(新興企業)に近く出資する。ブームになりつつある昆虫食に目を向ける企業も多い。人口増加を背景に食料不足は深刻化しており、ウクライナ危機による小麦などの供給不安は、そうした傾向をさらに強めている。各社は昆虫由来の代替タンパクを提供することで、社会課題の解決に貢献したい考えだ。

住商が出資するのは、高タンパクで知られる昆虫「アメリカミズアブ」の養殖加工を手掛けるシンガポールのニュートリション・テクノロジーズ(NT)。NTが近く実施する増資に応じ、既存株主のベンチャーキャピタルなどとともに事業会社で初めて出資する。出資比率などは明らかにしていない。

ニュートリション・テクノロジーズが養殖加工を手掛けるアメリカミズアブ
ニュートリション・テクノロジーズが養殖加工を手掛けるアメリカミズアブ

NTはニワトリや豚といった家畜の餌に混ぜるタンパク源として、アメリカミズアブの幼虫を脱水・乾燥させて粉末にしたものを販売しており、マレーシアにアジア最大規模の養殖場を持つ。

人口増の影響でタンパク質の世界需要は2050(令和32)年に05年比で約2倍に増える見通し。家畜の供給体制の強化も急務で、住商は家畜用のタンパク源の確保に動く。同社は「アメリカミズアブはタンパク質に富むほか繁殖が容易で病原菌の媒介リスクも低い。食料不足の解決に役立つ」としてNTの取り組みを支援するほか、販売先の開拓も行う。また、加工の過程で生じた油を使った化粧品や化学品などの開発にも取り組んでいく考えだ。

一方、昆虫食の中でも最も企業に注目されているのが、栄養価が高く飼育が比較的簡単なコオロギだ。

日本航空傘下の格安航空会社(LCC)であるジップエアは、7月に海外便4路線で食用のフタホシコオロギを使った機内食の販売を始めた。提供しているのは「トマトチリバーガー」と「ペスカトーレ」で、価格は各1500円(消費税免税、事前予約制)。それぞれパンとパスタソースにコオロギ粉末を混ぜて風味を良くした。同社によると「コンスタントに売れている」という。

ジップエアに粉末を供給しているのは徳島大学発のスタートアップ、グリラス(徳島県鳴門市)だ。同社は20日に粉末を使ったスナック菓子の先行販売を徳島県内で始めたばかり。また生活雑貨店「無印良品」を運営する良品計画のせんべいやチョコレート向けにも粉末を供給している。

昆虫は牛などと違い、少ない餌で効率よく育てることができ、環境への負荷が少ない。日本の場合、イナゴのつくだ煮などが食べられてきたことから、昆虫食への抵抗が少ないといわれる。日本能率協会総合研究所は、19年度に70億円だった昆虫食の世界市場が、25年度には1000億円規模に拡大すると予測している。(井田通人)

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